佐藤純弥の狂気が閃く、これが残酷やくざニューシネマだ!『やくざと抗争 実録安藤組』

基本情報

やくざと抗争 実録安藤組 ★★★☆
1973 スコープサイズ 93分 @DVD
企画:俊藤浩滋、吉田達 脚本:石松愛弘 撮影:仲沢半次郎 照明:川崎保之丞 美術:中村修一郎 音楽:日暮雅信 監督:佐藤純弥

あらすじ

■昭和20年代中頃、渋谷に発生した大学生の愚連隊グループは、矢頭(安藤昇)を中心として地元の橋場組を暴力で制圧すると、銀座桜会のドン(内田朝雄)が実子(郷鍈治)を弟分にしてやってくれと申し出てくる。それは、愚連隊を鉄砲玉に使って渋谷十文字組を壊滅する罠だったが。。。

感想

■『実録安藤組』と銘打ちながら安藤組は登場しないし、終戦直後の大学生の愚連隊を中年のおじさん俳優たちが演じるという、いかにも当時の東映ならではのデタラメさで、いまなら到底許されない雑な作り。でも、そんなトウの立ったおじさんたち(安藤昇江守徹小林稔侍、安岡力也、佐藤蛾次郎ら)が演じてもちゃんと青春映画になっているから、映画って不思議だし、この頃の佐藤純弥は冴えている。というか、ものすごいゴリ押しパワー。

■金筋やくざも任侠道も嫌いだから、ヤクザ映画は嫌いだと公言していた佐藤純弥は、この頃なぜか、ナチュラルハイの状態にあり、次作の『実録銀座私設警察』はとびきりのカルト作になったけど、本作もたいがい狂っている。シリーズ前作である『やくざと抗争』は狂気よりも、理性派としての持ち味がほとんど社会派映画として結実していたが、本作はもっと原始的で感覚的な、まるっきりニューシネマである。その意味では『組織暴力 兄弟盃』に似ている。

佐藤純弥は当時の同世代人と同じく、日活映画が好きだったし、大映増村保造は尊敬していた。本作は、日活ニューアクションから多くのキャストをスライドさせて、日活ニューアクション💕を隠そうとしない。それに、全作に通底している組織嫌いも、本作では強烈に打ち出される。大学生が組織する愚連隊矢頭グループは、やくざになることを拒みつづけながら、やくざよりも残酷な暴力も行使するし、桜会と十文字組の間で立ち回って、大組織の裏をかいて共倒れを画策する。そして大きな組織力に対抗するため、ついに矢頭組を立ち上げるが、おれたちは組織のために死ぬのはいやだ、おれたちはひとりひとりが組長で、代貸で、三下なんだ、俺たちの目指すものはそんな新しい組織なんだと誓う。なんだ?その爽やかな青春映画感は!そして、徹底した組織嫌悪!

■でも映画は全般的に殺伐として血まみれ。エスカレートする血なまぐさい暴力の応酬はまるで当時社会問題化していた過激派セクト内ゲバだし、ラストの籠城シーンはあさま山荘事件を彷彿させるし、佐藤純弥は当然意図的にそうした時勢を盛り込んでいるのだが、情婦藤浩子が死産した赤子を安藤昇が抱き上げる場違いに美しい場面と、佐藤蛾次郎たちが十文字組に捕まって色んなところを切断される(ぎゃー)むごたらしい拷問を受ける場面をカットバックした編集は、さすがにどうかしている。この時期、佐藤純弥はよほど腹に据えかねることがなにかあったのだろうか。佐藤純弥の心の闇が怖い。

キャメラはおなじみの仲沢半次郎だけど、本作はかなり気合が入っていたようで、移動にクレーンに手持ちにと、キャメラは動き回るし、照明効果もかなり凝っている。深作欣二はもともと『仁義なき戦い』を仲沢半次郎で撮るつもりだったわけだけど、スタイルとしては完全に完成している。本作はいくつも秀逸なロケ撮影があり、撮影賞ものじゃないかと思う。安藤昇の周りに看護婦が取り囲んで出生を祝福する場面なんて、蝋燭の灯りを生かした手持ち撮影が見事だし、安藤昇ナチュラルな繊細さが記録された名場面で、不覚にも感動した。仲沢半次郎、たしかに名手だわ。

■そして迫りくる敗北を噛みしめる苦々しいけど晴れやかなラストは、安藤昇のどすの利いた歌唱で、でも青春の戸惑いを歌い上げる主題歌までかかって、まさに遅れてきた日活ニューアクションじゃないか。そして、日暮雅信のノリノリの大活躍。この頃の佐藤純弥のどうかしてる大暴走は、ライバルで盟友の深作欣二を完全に凌駕していると思うけど、なんだか過小評価されているなあ。

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