リフ・ラフ ★★★

RIFF-RAFF
1990 スタンダードサイズ 94分
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リフ・ラフ [DVD]

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サッチャー政権下の1990年、格差社会の拡大で底辺に生きる建築作業員たちの日常生活は遣る瀬無い陽気さと停滞感とに包まれていた。スラム街に住むひとりの若い作業員と素人歌手の娘の恋を絡ませながら、彼と彼らを取り巻く社会環境の矛盾と下流生活の機微をリアルに描いたケン・ローチの小品。

■しかし、ラストの尻切れトンボのような終わり方は如何なものか。プロレタリア文学のような図式性を生硬に提示する愚は柔軟に回避しているものの、近年の傑作、佳作に比べると、人間描写も映画表現も作劇についても十分に成熟していない、と正直に感じる。逆に言えば、その荒々しく生々しいストレートな怒りが終幕のざわつきに表現されているということになろうか。作業員の彼らに(文字通り)踏み潰される鼠たちの姿や、ラストの炎から逃げ惑う鼠たちは、新自由主義の容赦ない業火に焼かれる英国の弱者たちの姿そのものではあるだろうが、よくこなれていないよ。

■リフ・ラフとは、”下層階級のろくでなしの連中”の意。確かに下流階級の彼らはそうした人間達でもあろうが、一寸の虫にも五分の魂、境遇の過酷さをあるものは陽気に受け流し、あるものは受け止めきれない悲喜劇を描いて、辛気臭くならないのがこの監督の美点だ。


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