カルラの歌 ★★★☆

CARLA'S SONG
1996 ヴィスタサイズ 126分
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グラスゴーのバス運転手(R・カーライル)は無賃乗車した外国人女カルラを助けたことから一目ぼれし、積極的にアプローチして気持ちを伝えることに成功するが、カルラは自殺を図る。ニカラグア出身の彼女の抱える内戦のトラウマを探るべく、二人はニカラグアへ旅立つが・・・

■前半は、グラスゴーのやんちゃな兄ちゃんの異国の女への熱い想いを中心にラブロマンス的な展開で観客を感情移入させ、後半は地獄の内戦に苦しむニカラグアの現実を主人公の目を通して観客に突きつける社会派映画だが、残酷な暴力は主にスコット・グレンの台詞で表現され、直接的な残酷描写は無いところが、昨今の映画との大きな違いだ。しかし、静かな語り口が、じわじわと世界の矛盾を実感させる。

■ソモサ王朝をサンディニスタ革命(「歌う革命」)で終焉させたニカラグアだが、革命は必ずしも人々の幸せをもたらさず、東西両陣営の思惑による介入、特にアメリカのCIAを通じての介入による反政府組織コントラとの内戦の悲劇は、ヒロインカルラとその恋人との再会に象徴されている。カルラの歌に込められた想いは、革命の理想がもたらす希望と現実の落差の大きさを哀しく表現している。

■脚本は、このあとケン・ローチと組んで傑作、佳作を連打するポール・ラヴァーティ。正統的な作劇の名手だと思うぞ。R・カーライルとスコット・グレンの顔の対比だけで、テーマ性が露骨に表出される配役も絶妙。何も解決しないラストは「リフ・ラフ」のラストにも通じており、主演をR・カーライルが演じる意味もそこにあったのだろう。


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