アイ・アム・レジェンド ★★★

I AM LEGEND
2007 スコープサイズ 100分
TOHOシネマズ二条(SC6)

 癌の特効薬は予想外の副作用を生じ、新種のウィルスが発生、人類の大半は夜の闇に潜むゾンビと化す。NYにたったひとり残った免疫を持つ主人公は、他の生き残りにAM放送で呼びかける。本当に世界は終わってしまったのだろうか・・・

 リチャード・マシスン原作の有名小説の3度目の映画化。監督はフランシス・ローレンスなので、VFXの見せ方はスタイリッシュで、全編に渡って映像表現の冴え方は素晴らしい。特に導入部分の人類滅亡後のNYで鹿を狩る場面は傑作だ。脚本と製作にアキヴァ・ゴールズマンが参加しているので、ビジュアル的に「 アイ,ロボット」にも似ているから不思議だ。闇の住人と呼ばれるゾンビたちはCGで表現され、主人公との戦いが「 アイ,ロボット」そっくりに見えてしまうのだ。

 主人公に相棒として賢いシェパードを設定したところは悪くない改変で、前半はこのコンビの交流が軸として展開し、お約束どおり犬が死んだ後、新たな登場人物が現われるのだが、原作から大幅に改編した終盤の展開には、賛否両論あるところだろう。実際、シャマランの電波系映画(というかある種の哲学でしょう)「サイン」に似たアイディアなので、いかがわしいことは確かなのだ。主人公がNYを離れようとしない理由には9・11事件のトラウマが色濃く仮託されているし、そこに終盤の”神の意思”を汲んだ人間達が世界を破滅から救うというモチーフが絡むとなんだか胡散臭い気がしてくるのだ。SFであった原作を、宗教的なモチーフにスライドさせた脚色は、どうも反動的に見えてしまう。

 しかし、アンドリュー・レスニーシネスコの画角を生かした画作りの上手さ、明快な色彩設計は、映画の醍醐味を堪能させてくれるし、フランシス・ローレンスの洗練された映像スタイルは絶対に映画館で観ておくべきものだ。

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