エコーズ ★★★☆

STIR OF ECHOES
1999 ヴィスタサイズ 99分
DVD


 電気工の主人公(ケビン・ベーコン)は、パーティーで妻の姉から戯れに催眠術をかけられると、血塗られた恐ろしいビジョンを幻視するようになる。ついに自宅内で女の亡霊を目撃し、何事かを訴えようとする気配にとり憑かれ、言動に変調を来たし始める。だが、その女の亡霊の存在に気づいているのは、彼だけではなかった・・・

 リチャード・マシスン原作の怪奇小説をハリウッドの大作専門脚本家(?)デビッド・コープが脚本と監督を務めて映画化した、古風な怪奇サスペンス。明らかに低予算映画で、ホラーといっても所謂スラッシャー映画のように若年層にアピールする派手さが無いので日本では大規模公開はされなかったようだが、着実に撮られた正調怪奇映画の佳作である。

 幽霊屋敷ものであり、霊能者ものでもあるのだが、奇妙なビジョンにとり憑かれて狂ってゆく主人公をベテラン演技派のケビン・ベーコンに任せたことで、仕掛け重視になりがちがこの種の映画の弊害を確実に回避し、演技的にも見ごたえのある映画になっている。その妻を演じるキャスリン・アーブとの掛け合いがリアルな夫婦像を描き出して、物語に説得力を増しているし、いかにも怪しげなその姉をイレーナ・ダグラスが異様な風貌で演じ、強烈なキャラクターを披露する。この役者たちの個性のアンサンブルがこの映画の大きな魅力になっている。

 催眠術によって眠っていた能力を覚醒され、霊的存在を感知することで、主人公は一見平和で友好的なのどかな街の裏側に隠された血なまぐさい秘密に肉薄することになる。

 ベビーシッターを巡る場面で急展開するストーリーテリングの妙味もなかなかだし、黒人の大男が主人公の息子に霊能力があることを見抜く墓地の場面のスリリングな演出はおおいに見ものだ。単なる大味脚本家ではなさそうだ。

参考

リチャード・マシスンといえば、こちらもなかなかの秀作でして。
maricozy.hatenablog.jp

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