『激突』

激突! (ハヤカワ文庫 NV 37)

激突! (ハヤカワ文庫 NV 37)

■「スローター・ハウス」は正統派の幽霊屋敷もので、今一つ捻りに欠けると思うが、「狂った部屋」は部屋中の家具や道具といった無機物が主人公を血祭りに上げるという子供じみた着想を入念な心理描写で説得力を持たせた傑作だと思うし、有名な「蒸発」もマシスン独特の実存的不安を端的に表現して冴えている。
■しかも、翻訳者の小鷹信光の巻末解説が実に傑作で、非常に辛口の筆致でマシスンの偉業を分析している。贔屓の引き倒しからは程遠く、マシスン作品の立ち位置を正確に言い当てている気がする。

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