『戦争を知らない子供たち』

基本情報

戦争を知らない子供たち
1973/CS
(2002/9/28 BS2録画)
原案/北山 修
脚本/大和屋竺藤田敏八,古俣則男,松本正志
撮影/福沢康道 照明/小島真二
美術/竹中和雄 合成/三瓶一信
監督/松本正志

感想(旧ブログより転載)

 校内でのキスをとがめられて謹慎処分を食らった3人の高校生たちはその中のひとり(加藤小代子)に誘われて校内自由化を掲げて校内に立て籠もるが、過激派に襲撃されて運動を諦め、東北のどさまわりの旅一座に転がり込む。だが、それぞれの思いから3人はバラバラになり、主人公(島村美輝)は学校へ戻るが、校庭から不発弾が発見されたと聞くや、爆弾を抱いたまま穴の中に閉じこもってしまうのだった。
 「狼の紋章」の松本正志らしく、後半に随分と弾けた演出を見せるが、それまでは案外オーソドックスな青春映画として撮られており、意外にも胸を打つ作品に仕上がっている。
 ここでは戦争と主人公の性というモチーフが重ね合わせられており、唐突に思える中盤から不発弾のエピソードへの移行も、性的なメタファーとして捉えれば、しっかり通底していることが分かる。
 1973年の東宝で青春映画を撮って監督デビューするという時点で既に出遅れてしまったという感覚を持たざるを得なかった松本正志の素直な心情吐露でもあろうが、十分に普遍的な青春映画として機能していることに驚かされる。一種のマドンナとして登場する女教師の酒井和歌子がいつになく眩しい。
 ラストの髪を切り、学生服に身を固めた主人公の登校が高倉健の殴り込みにも似て見えることが、次回作「狼の紋章」での松田優作の大虐殺を導き出していることは間違いのないところだろう。
 監督助手を勤めた橋本幸治が監督デビュー作「さよならジュピター」で杉田二郎を起用することになるのも、この作品が縁にとなっているに違いない。
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