ノウイング ★★★★

KNOWING
2009 スコープサイズ 122分
MOVIX京都(SC2)

■「ダーク・シティ」「アイ、ロボット」のアレックス・プロヤスの待望の新作。ベートーヴェン交響曲第7番第2楽章が静かにある終末を追悼するSF映画の傑作だ。「スター・トレック」(J・J・エイブラムス)に無かったものが、ここに確実に存在する。これがSF映画だ。

■SF映画っぽい意匠をまといながら、単なるスペクタクル映画であることが多い困った昨今、きちんとSFドラマとサスペンスを両立させるアレックス・プロヤスの存在は貴重だ。本作でもスペクタクルなVFXシーンは用意されているが、ここぞというピンポイントに配置されており、だらだらとしたCG映像の垂れ流しではなく、あくまでドラマをサスペンス豊かに物語ることを優先している。妄想に基づいたセカイ系映画かと思いきや、「ディープ・インパクト」な大団円を迎え、さらにその先まで垣間見せる。マルコ・ベルトラミの劇伴もヒチコック調を選択しており、サスペンスとして物語ろうとする意志を表明している。オーストラリア(本作はオーストラリアで撮影された)アニマル・ロジックのVFXも出色で、特に終盤の大災害や●●●の表現は見ごたえがある。例の旅客機墜落の場面は、燃え上がる炎をCGで表現した(らしい)カットは微かに違和感があるが、ワンカットで撮った風に臨場感を煽ったキャメラワークとマッチムーブはさすがに強烈。中盤までサスペンスで引っ張って、遂に大スペクタクルが発生するという構成の上手さ。奇を衒わず、心地よいサスペンスを孕んで転がってゆくサスペンスは、久しぶりに上質なアメリカ映画を観た気分だ。

■結末はある意味ありふれた結論だが、母を亡くした主人公父子の関係がきちんと描けているから違和感が無いし、●●●が昇天する場面など、70年代末頃にSFX映画を初めて観た頃の感動を思い出させる美しさだ。技術的な問題よりも、演出の姿勢が大きいだろう。アレックス・プロヤスの筋の良さを改めて感じさせる逸品だ。黒沢清ファンも必見。

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