初姿丑松格子 ★★★☆

初姿丑松格子
1954 スタンダードサイズ
BS2録画

原作■長谷川伸 構成■橋本 忍 脚本■堀江正太
撮影■山崎安一郎 照明■安藤真之助
美術■水谷 浩 音楽■大森盛太郎
監督■滝沢英輔


 女房お米(島崎雪子)に横恋慕する若旦那を勢い余って殺害してしまった丑松(島田正吾)は元締め(石山健二郎)の手はずでほとぼりの冷めるまで田舎に逃げ延びる。女房恋しさに江戸へ向かった丑松が投宿した板橋宿で相方に出された女郎は変わり果てた女房だった。丑松に責められたお米は元締めに苦界に沈められたことを告白して自害してしまう。復讐のために江戸へ戻った丑松は・・・
 長谷川伸の名作「暗闇の丑松」を橋本忍の構成で新国劇総出演で映画化した佳作。主演は島田正吾で、丑松を庇う呑んだくれの剣の先生として辰巳柳太郎が登場、短い出番ながら、いい見せ場をもらっている。
 かねてより映画俳優としての島田正吾には苦言を呈し続けている当劇場だが、この作品に関しては、役者のキャラクターと役柄が巧く当てはまっており、安心して見ていられる。追い詰められて憔悴してゆく後半部分のやつれ方のリアルさなど、凄惨さが際立って痛々しいほどだ。
 構成の橋本忍は確かにおおまかな部分のみに関わったようで、橋本忍らしい技巧的な展開は見られない。冒頭の殺人事件から始まって、丑松の回想へ続くあたりの構成が橋本忍的ではあるのだが、全体に原作に忠実な構成(だと思う)で、二転三転する骨太なストーリーテリングの妙味は薄い。
 しかし、滝沢英輔の腰の座ったゆったりとした語り口で、女の性に対する執着と深い畏れに操られるように血にまみれる丑松の因果な物語が語られて、特に後半凄みを増す。命乞いをするために丑松を誘う元締めの女房を殺害する場面は、女に対する丑松の二律背反な真情を劇的に示して圧巻だ。
 新国劇と組んだ日活はこの時期「国定忠治」「地獄の剣豪・平手造酒」「六人の暗殺者」と時代劇の名作、佳作を連発しているのだが、DVDボックスでも出してくれないものだろうか。今見ても十二分に時代劇の真価を発揮する名作群である。
 おそらくこの原作は大映京都の末期に池広一夫あたりが市川雷蔵で映画化していれば確実に傑作に仕上がったはずなのだが、そうした企画が構想されなかったことが惜しまれる。


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