■光生(瑛太)と結夏(尾野真千子)は離婚したまま1年も同棲を続けるけど、結夏は弁当屋の親父(岡田義徳)の家族に馴染んで一緒に北海道へ行こうと誘われ、一方諒(綾野剛)は高校時代に一緒に駆け落ちした例の塩見さん(臼田あさ美)と再会し、捨てたはずの人生の選択肢との間で迷い始める。
■その関係者が、何の因果か札幌行きの寝台特急カシオペアに集結し、そのラウンジで最高の修羅場を展開するのが大きな見せ場。シリーズ名物の長尺の修羅場設定だけど、もう完全に舞台劇の域。そこに至る段取りはいかにも坂元裕二らしく大味なご都合主義だけど、見せ場の科白劇がさすがに独壇場で、こんなの誰も書けないし、楽しいから許すよね。演出的にはまだ後のドラマのような洗練はないけど、まあ立派なものですよ。
■さらにその後、光生と結夏は子どもを持つことに関するすれ違いの溝を埋められず、光生は結夏から別れをはっきりと告げられる。一緒にいたら、あなたのいいところ、面白いと思うところがだめになっちゃうから、そんなの嫌だから、やっぱり別れようと告げる結夏に、光生は言葉も出ない。でもやっぱり結夏が好きだよと告げる、それだけで目一杯。泣ける。。。
■なのでドラマは一人になった光生が、結夏に近況報告というラブレターを出すところで、終わる。シリーズ第7話で結夏が結局出さなかったラブレターの部分に呼応した展開で、さすがに上手い趣向。もちろん、光生は一人でいることが好きで、孤独じゃないと生きていけない、そんなあなたやわたしに似た男の子だけど、結夏のことは生涯一緒にいたいとずっと思っていて、それでも頻繁にぶつかり合うけど、でもその傷とその傷跡の積み重ねを大事な宝物と思っているいい奴なので、本作の最後は少し寂しすぎるのだ。
■シリーズを通じて光生と子どもの関わりはずっと継続して描かれていて、本作でもぎこちない感じだけど、それでも成長した光生の姿が描かれるのは、坂元裕二が光生の成長を描こうとしている証で、多分この後も年に一作ずつ光生の成長を描き、どこかですでに大人として成熟した結夏にやっと追いつく構想があったのだろうと思う。素直に観たいです。そのとき、目黒川沿いは桜が満開なことでしょう。でももう10年も経ってしまったので、さすがに無理ですね。。。