日本の近現代史の闇に迫る?わけないけど、意外な社会派ホラー『残穢 住んではいけない部屋』

基本情報

残穢 住んではいけない部屋 ★★★
2016 ヴィスタサイズ 107分 @アマプラ
原作:小野不由美 脚本:鈴木謙一 撮影:沖村志宏 照明:岡田佳樹 美術:丸尾知行 音楽:安川午朗 VFXプロデューサー:赤羽智史 監督:中村義洋

感想

■借りたマンションの和室で変な音がするので怪奇実話の作家に相談したら、どうもマンション全体に霊障があるらしく、土地の歴史を代々辿っていくと。。。

■怪奇実話系の幽霊屋敷物かとおもいきや、お話はどんどん過去に遡り、その土地が穢れた出来事を次々と明らかにするから、実はかなり気宇壮大な怪奇ドラマ。まあ、原作がそうなんだけど、どこまで風呂敷を広げるのかと途中からは怖さよりも、そちらでワクワクしてくる。この部分はこの映画のユニークなところで、しかも監督の意向で登場人物は実に淡々と演じる。演技は淡々とナチュラルなのに、禍々しい出来事や由来が積み重なることで、惻々と恐怖が湧き上がるというのは、うまいやり方で感心した。竹内結子なんて完全に狂言回しだし、橋本愛だって演技の見せ場はないのだが、かなりいい味を出してるのは、監督の力量だと思う。むしろ、脇役で登場する佐々木蔵之介なんかのほうが怪奇映画のステロタイプで、却って浮いて見える。

■最終的に北九州の炭鉱王と過酷な炭鉱労働に行き着くというのは、なかなか微妙なところで、そんなことやるならもっと真面目に彫り込まないといけないし、逆にそれができないなら、あっさりと捨象する方がいいのではないか、と感じる。明らかに麻生財閥(!)を意識させる社会派路線でもあるし、朝鮮人労働者や被差別民の問題にも触れることになるはず。原作者の小野不由美は当然わかっているはずだが、社会派小説ではないので、割愛しているだろう。(ひょっとして触れているかな?だとすれば偉いけど)

■そもそも「穢れ」の概念の扱い自体も非常にデリケートな問題で、必ず差別問題を孕む。相当な覚悟なしに、安易に土地が穢れているなどということは問題を生む。そもそも「穢れ」という概念は原始民俗、神道系のもので、少なくとも鎌倉新仏教以降、仏教理論ではそんなの迷信にすぎない、気の所為として一蹴しているはず。映画の中でいかにもご都合主義的になんでもぺらぺら説明してしまう僧侶(上田耕一!)が登場するけど、よくこの内容で寺をロケに貸し出したなあと、逆に感心する次第だ。

■穢れたと人間が感じるから穢れが生じるのであって(お話ではもちろんそうじゃなくて客観的に存在すると描くわけだが)、たぶん映画の言いたいことは例えば「呪怨」という歴史的な経緯を曰く因縁を持たない全く新しい言葉で表現した方がすっきりするのではないか。(それじゃ違う映画になっちゃうけど)「穢れ」なんて古臭い言い方をすると、却っていろんな問題が不必要に気になって、純粋に楽しめなくなってしまうのだ。

■端的に言って怪異シーンはちっとも怖くないし、表現に新味もないのだが、淡々と忌まわしい事件を積み上げるだけで、心理的ホラーになることを示した力作ですよ。例えば、昔なら野村芳太郎あたりが撮っても良かったよね。


参考

北九州の炭鉱王が冤罪事件に絡んでいるという妄想が炸裂する、最新傑作。
maricozy.hatenablog.jp
炭鉱映画はいっぱいあります。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
炭鉱王の家にまつわる怪談といえば幻の東宝特撮『火焔人間』がありますね。案外今からでも仕切り直して、いけるんじゃないの?
maricozy.hatenablog.jp

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