マスターズ・オブ・ホラー「世界の終り」 ★★★☆

ジョン・カーペンターによる秀逸な幻想譚。一度だけ映画祭で上映された後、封印された呪われた映画のプリントを求めて彷徨う主人公は、誰が何のためにその映画を作ったのかを知ることになる。その真相は直接的には言及されないが、ちゃんとわかるようには作られている。このあたりのさじ加減が絶妙。

■しかし、前半で翼をもがれた天使そのものが実在として登場するあたりが、一筋縄ではいかないカーペンターで、普通ならクライマックスにとっておくギミックだと思うが、早々にネタを明かしてしまう。でも、それが独特の映画的世界観に繋がっているから、侮れない。久しぶりに思索的な怪奇映画を観た。主人公が、映画フィルムのロールチェンジを知らせるパンチマークの幻覚を見るというアイディアは絶妙。こんなアイディアを生かし切るのは、カーペンターくらいだろう。

© 1998-2024 まり☆こうじ