めぐるめぐるよ因果は巡る。因果な母子の、その行く末は…かなりの力作だった『サイコ2』

基本情報

Psycho II ★★★☆
1983 ヴィスタサイズ 113分 @アマプラ

感想

■もちろん昔観ているけど、映画館ではなく、レンタルビデオで観たはず。封切り当時もわりと批評家筋の評判が良かったはずだけど、個人的にはあまり感心はしなかった。ただ、メグ・ティリーのキュートさだけがなぜか強烈に印象に残っている。

■精神病院を退院して責任能力なしとして無罪放免されたノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)は、結局実家に戻るしか無い(やめとけよ!)が、バイト先の小娘(メグ・ティリー)が妙に親切なのでついつい家に誘ってしまう。でも、同時に死んだはずの母親からのメッセージが届くようになり、ボクまた狂っちゃったのかなあと不安になる。さらにはボクちゃんの周りで失踪者が出て、ますます不利な立場に。。。

■もともとの原作者のロバート・ブロックも『サイコ2』という小説を書いたけど、映画はそれを使わず、トム・ホランドのオリジナル脚本を用意した。監督は本作のあとの『リンク』が良かったリチャード・フランクリンで将来を嘱望されたのだが。。。むしろトム・ホランドがその後躍進して、『フライトナイト』『チャイルド・プレイ』という傑作を撮った。

■改めて見直すと、リチャード・フランクリンの演出は意外と大人しくて、特に前半はサスペンスとかショッカーではなく、じっくりとドラマを見せる姿勢。だからアンソニー・パーキンスの神経衰弱演技も、親子くらい年の差があるのにそれを姉さん気質で支えるメグ・ティリーのしっかり者感なども説得力がある。なので、いわゆるジャンル映画的なステロタイプな映画ではない。いい意味でね。

■中盤に大きな捻りがあり、その描き方も実にあっさりしている。今どきの映画ならもっとあざとく見せるところだろうけど、実にさらっとネタを明かしてしまう。もちろん、オリジナルの『サイコ』を踏襲しているが、大成功。そして後半はノーマン・ベイツの母子関係と、メグ・ティリーの母子関係が対比されるという、なかなか高等な作劇に突入し、終盤にさらに大ネタを披露するから、たしかにこれは演出的にというよりも、脚本がよくできている。この脚本なら、確かに玄人筋も納得せざるを得ないよね。

■ただ、ディーン・カンディの撮影がいかにも80年代テイストで、今観るとさすがに残念な感じは否めない。むしろ今のデジタル機器で撮影したほうがより硬質な画調になるだろうし、より怪奇映画的なタッチになっただろう。SFXはアルバート・ホイットロックが担当して、かなり大規模な作画合成を中心に、オーソドックスな大活躍。このあたりもSFX映画というよりも、それ以前の特撮時代の雰囲気。

アンソニー・パーキンス神経症演技はもちろんしっかりしているし、演出もギミック的なあざとさよりも役者の演技でサスペンスを生み出す手法で成功している。そこにはメグ・ティリー(ティム・カリーじゃないよ!)の配役の成功が大きく、親子ほど違うカップルの関係性に妙な説得力を生んでいるから侮れない。そこが成立しないとこの映画の成功はなかった。メグ・ティリーは本当に良くて、演技の質云々ではなく、無二の存在感を示す。対して、オリジナル版から続投のヴェラ・マイルズの扱いは酷くて、気の毒なほど。もちろん、脚本上の要請なので、女優としては求めに応じて的確に演じあげるわけだけど、よく受けたよなあ。。。まあ、趣向としては大成功だけど!


参考

トム・ホランドの『フライトナイト』は傑作でした。
maricozy.hatenablog.jp
リメイク企画は失敗でしたね。。。
maricozy.hatenablog.jp
このリメイクもいまいちでした。
maricozy.hatenablog.jp
いまやヒチコックもすっかりセクハラ親父扱いですね。
maricozy.hatenablog.jp

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