HITCHCOCK
2013 スコープサイズ 99分
TOHOシネマズ二条
■ヒッチコックが苦労の末、『サイコ』を撮りあげて興行的に大成功するまでを、妻のアルマの浮気と確執と内助の功を中心に劇化した、典型的な”おもろい夫婦”映画。ヒッチコックのファンではなくとも、普通に楽しめるように作られているが、逆に映画通には物足りないことだろう。
■『サイコ』の終盤の脚本改訂に協力し、監督が病気で寝込めばスタジオに駆けつけて階段落ちの場面の演出指示を出すという妻アルマの大活躍は、作劇として単純に面白いし、遂に夫に長台詞で反撃する場面も、お約束どおりながらさすがに見せる。
■脚本家のジョセフ・ステファーノや作曲家のバーナード・ハーマンまで登場するからなんとなくそれだけで面白がってしまうのだが、スカーレット・ヨハンソン演じるジャネット・リーよりも、ジェニファー・ビール演じるヴェラ・マイルズの方が役柄としては面白く、『めまい』ヒロインの降板事件に対するヒッチの恨みと片想いの様子が味わい深い。
■アンソニー・ホプキンスが特殊メイクでヒッチコックを演じるが、正直あまり似ていない。なんとなく、ウィリアム・キャッスルに似ているような気さえするが、この微妙な似ていなさとか、眼が怖いところとか、『サイコ』と同じくエド・ゲインの猟奇犯罪に取材した『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスを思わせるのだけど、これはサーシャ・ガヴァシの演出意図だろうか。ヒッチコックのストレスがエド・ゲインとの交感を生じさせるあたりの作劇はちょっとした新工夫だけど、どこまで有意義だったかどうか。
参考
ジョセフ・ステファーノは『サイコ』で当てて、一気に商売人になりましたとさ。でも、その歪さが楽しいんですね。
maricozy.hatenablog.jp