コミュ障で何が悪い?『ベイビーわるきゅーれ』

基本情報

ベイビーわるきゅーれ ★★★
2021 スコープサイズ 95分 @DVD
脚本:阪元裕吾 撮影:伊集守忠 照明:伊集守忠 美術&装飾:岩崎未来 音楽: SUPA LOVE アクション監督: 園村健介 監督:阪元裕吾

感想

■殺し屋女子コンビのバイオレンス活劇と怠惰な(ありふれた)日常の対比を描いた若者向け活劇映画。活劇部分のアクション演出は世界レベルというのが凄いところで、基本的に超低予算デジタル映画なんだけど、そこは尖っている。アクション監督には園村健介を呼んできて伊澤彩織のアクションに見せ場を委ねる。でももう少し予算確保すればいいのにな。

■何が驚いたといって、いまどき安いスマホでももっと映画的でリッチなフィルムルックが見せられるのに、敢えてかどうだか、昔のVシネマっぽい荒れたルックとか、色調の反転とか、スーパー16ミリ撮影でマスター作成の費用をケチったかと思われるような貧乏な映像で、21世紀のいま逆に新鮮。いまどき、安いデジタルキャメラでももっと綺麗になってしまうのだが、敢えて粗していると思う。じゃないと技術的にありえない。

■殺し屋女子コンビの物語だけど、実際にはコミュ障のまひろ(伊澤彩織)が主役で、普通に生活力がある相方のちさと(髙石あかり)との対比のなかでその生きづらさがテーマになっている。そして、その生活ぶりはかなりリアルだと感じる。いや実際リアルだ。あんな娘身近に実在する。この人物像には『ザ・コンサルタント』のベン・アフレックが参照されていると思うけど。

■二人の関係は近年アメリカ映画で盛んなホモソーシャル「ブロマンス」ならぬ「ウーマンス」な人間関係ではなく、母娘のように描かれるのがユニークなところで、今後のシリーズ化のなかでまひろの成長が描かれる含みを残して、いい塩梅だと感じる。シリーズ化して二人が決別するまでを描けば立派なもの。先日公開された二作目は未見だけど。

■ただ、伊澤彩織のマーシャルアーツって、技術的には凄いんけど、映画的な華がないのは惜しいところ。ハリウッド映画のように無意味にカットを刻まず、長めのカットでしっかり見せる演出は好ましいけど、戦う場所もあえてVシネマぽく荒涼としているし、衣装もリアルに安いし、そのなかでもなにか活劇としての華が欲しいところ。そこは演出家が工夫してほしいなあ。せっかくの逸材なんだから。

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