ヘラクレス ★★★☆

Hercules
2014 スコープサイズ 99分
Tジョイ京都(SC6)

ブレット・ラトナーが監督、好漢ドウェイン・ジョンソンが主演と聞けば劇場に駆けつけないわけにはいかないだろう。もともと、昨今流行のCG垂れ流し系のファンタジー大作かと誤解していたのだが、お話はヘラクレスの伝説を描く物語ではなく、伝説を利用して傭兵軍団を率いる男が真の英雄ヘラクレスになるまでを描くという批評的な視点を導入している。正義のために闘ったはずの男たちが、雇い主の真の意図を知ったとき、敢然と反旗を翻すという、お約束どおりの王道活劇で、甘ったるいファンタジーなど入る隙間も無いスパルタ式アクション映画の快作。

■実際のところアクション演出の見せ場については斬新な趣向は無く、ダブルネガティブの担当したVFXもCGの怪物や動物たちはよく出来ているものの新味がなく、これで大丈夫かと思って観ていると、それらは真の物語の布石にしか過ぎないことが分かってくる。このあたりからドウェイン・ジョンソンが主役を張る意味が明らかになってくる。つまり、現代アメリカ映画で、オーソドックスな王道活劇を作るぞという意気込みが伝わってくるのだ。

■お話の骨格には『七人の侍』も入っていて、お話を見事にひっくり返して見せるあたりは見事なもので、侍たちの雇い主の農民たちは本当に正義の側だったのか、野盗こそが虐げられるマイノリティではなかったかと問いかける。そのテーマ設定は、傭兵ものの活劇映画の王道であるが、極めて現代的でもあり、サブエピソードの小気味良い構築振りは、ブレット・ラトナーのおなじみの手腕である。

ジョン・ハート演じるコテュス王とジョセフ・ファインズ演じるエウリュステウス王がクライマックスで一堂に会する場面などご都合主義以外の何物でもないのだが、そのほうが効率的で痛快だから、観客的には全く問題なしだね。むしろ、こうした効率優先の無理くりは活劇映画の醍醐味ですらある。弓の名手を演じたノルウェー出身の女優イングリッド・ボルゾ・ベルダルは、ちょっとニコール・キッドマンを思わせるところがあり、今後活躍するだろうなあ。

■アレクサで撮影されたデジタル映画で、もともと3Dでの鑑賞がデフォルトと考えられており、明らかに3D鑑賞を優先した、2Dで観ると不自然な画面構成がかなり見られる。それにCG合成で拡張された舞台背景は精密なロケ撮影に比べて明らかに閉塞的で狭苦しくなるのは昨今のVFX大作同様の傾向だ。でも、IMAX3Dで観ると、奥行きがリアルに感じられて逆に自然に感じられるのかもしれない。

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