アイドル映画だけど、みんなで脱ぎまくる謎映画!根岸吉太郎の『探偵物語』

基本情報

探偵物語 ★
1983 ヴィスタサイズ 111分 @アマプラ
原作:赤川次郎 脚本:鎌田敏夫 撮影:仙元誠三 照明:渡辺三雄 美術:徳田博 音楽:加藤和彦 監督:根岸吉太郎

感想

■「あまちゃん」観てたらなんとなく観たくなって、初めて観ました。薬師丸ひろ子松田龍平の絡みは本作をオマージュしてるから。でもたぶん初見です。『時をかける少女』と二本立てだったけど、当時も『時かけ』の方が話題になったと記憶します。

■監督が根岸吉太郎で、以下に示すような秀作を発表しているので、素性の良い監督なんだけど、これはさすがに脚本がスカスカ。ミステリーでもサスペンスでもない困ったアイドル映画。お話が薄いのに上映時間は2時間近くあるという拷問のように退屈な映画だ。アイドル映画でもちゃんとサスペンスを効かせた脚本は書けるはずなのに。

■最近60年代の邦画を中心に観ているけど、70年代に語り口が変化し、80年代に入ると相当に変質している。60年代は二本立ての90分にドラマを集約するためにテンポアップが図られたけど、80年代は長廻しが全盛で、妙にテンポが遅い。本作も望遠、長廻しというスタイルで、カット割りの映画ではない。

■配役も結構豪華なのに、アップがないから誰かわからないという当時の邦画らしい珍現象が。やっぱ、こういうスタイルはダメだと思いますよね。60年代の日活映画なんかでも、中平康などを中心に結構長廻しは多用されているけど、アフレコも多用するから台詞も早口なのに明瞭だし、役者もきちんと立つように動きをつけて撮られていて、誰かわからないなんてことは避けられている。そうした部分は演出的にかなり劣化していると感じる。まあ、いかにも古風な映画的なわざとらしい演出はかっこ悪いからやらないんだという雰囲気だけど、あえていえば、やる気のないときの中平康の演出に似ているのだ。

薬師丸ひろ子を女優としてではなく、動物的に撮るという演出方針で、長廻しで木をよじ登ったり、門扉を乗り越えたり、天井裏に這い上がったりといったアクションを意図的に見せるのは、いわば、ジャッキー・チェンカンフー映画と同じ趣向だけど、相米慎二のフォロワーにも見えてしまう。根岸なのに。

■ホントに役者たちに対する愛が感じられないのが一番観ていて辛いところで、プログラム・ピクチャーの時代との一番の違いはそこだと感じる。60年代の邦画なら、自社所属の脇役だって、もっと丁寧に撮ってたよ。わざわざ呼んできた中村晃子の処遇なんて酷いもんだよ。この頃、まだ東映では昔ながらの演出スタイルが生きていて、ちゃんと脇役まで見せ場がある作劇が健在だったのになあ。藤田進なんて場違いな映画につきあわされて気の毒な感じ。

■基本的にドラマに面白い要素が全くなくて、松田優作秋川リサの腐れ縁なんて、誰が観たいのか意味不明だし、北詰友樹と坂上味和の関係だって描き方に全く愛がないし、坂上味和が惜しげなく脱ぐのに、扱いに愛がないから観ていて気の毒。秋川リサナチュラルに脱ぐし、とてもきれいなんだけど、ここで見たいものはそれじゃないので、ありがた迷惑にしか感じない。アイドル映画でこんなにヌードや濡れ場を見せられても困るわけ。なんと財津一郎まで脱ぐからね(赤パンでノリノリ!)!かなり混乱した企画だと思う。併映の『時かけ』は正調アイドル映画だし、余計に異物感が際立つ。何がしたかったのコレ??

参考



根岸監督はちゃんとした監督なんですよ。デビュー作をいまだに観ていないのだけど。
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