【死ぬまでに観たいこの一本】記憶の中に遠く煌めく、あの永遠の夏!『パーマネントブルー 真夏の恋』

■その昔、エアコンも付いていない真夏の熱帯夜に、14インチのモノクロTVで、深夜の邦画劇場で放送されたこの映画を悶々としながら観たという記憶。でもそれすら既に怪しくて、朝方に放送されていた奥様邦画劇場で、ちゃんとカラー放送で観たような気もする本作ですが、でもたった一度しか観たことが無いという記憶は、たぶん確実だ。そして、ロバート・マリガン監督の『おもいでの夏』とともになぜか生涯の心の友となってしまった映画。

おもいでの夏 [DVD]

おもいでの夏 [DVD]

  • 発売日: 2015/12/16
  • メディア: DVD

■『おもいでの夏』は今でも普通にDVDで観られますが、『パーマネントブルー 真夏の恋』はなぜかなかなか観られない幻の映画になってしまいました。著作権関係でなにかややこしいことでもあったのでしょうか。いまだにDVDが発売されません。

■島を出たいと夢見る少年の前に、過激派の秋吉久美子が流れ着き、ひと夏の恋が始まるという物語です。秋吉久美子が公安に追われる学生運動の過激派には見えないという違和感は筋違いで、所詮ファンタジーなのだから、秋吉久美子で良い訳です。いやむしろ、その違和感こそが映画ならではの趣というものでしょう。

■監督の山根成之は1976年の『さらば夏の光よ』とか1977年の『突然、嵐のように』で若い映画ファンに当時絶大な人気を誇った監督で、日活ロマンポルノ系の神代辰巳とか藤田敏八とかが、関節の外れたような、手持ち、長廻しのルーズな映像作りの面白みを示して、みんなあれがカッコいいんだと思い込んでいた時代に、山根成之はもっと古典的な映画を撮りました。ゆえに、少し上の世代の観客の支持を集めたのではなかったか。現場でも、藤田敏八みたいに悩みながら撮るタイプではなくて、迷いなくサクサクと撮り進めてゆく早撮りタイプだったらしい。

■美少年だった佐藤佑介と年上の女(ひと)秋吉久美子というカップリングだけでご飯がなんぼでも食べられるくらいに濃密で、儚い夏の幻が脳裏に勝手に幻影を映し出すくらいに強烈に、たった一度観ただけなのに人生の伴侶となってしまう、そんな運命的な映画なのです。死ぬまでに、せめてもう一度。


参考

原作小説も既になかなか手に入りませんよ。

秋吉久美子 調書 (単行本)

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