鉄火芸者はおんなヤクザとは違うのだ!『鉄火場慕情』

基本情報

鉄火場慕情 ★★
1970 スコープサイズ 95分 @アマプラ
企画:坂上静翁 脚本:棚田吾郎 撮影:横山実 照明:藤林甲 美術:佐谷晃能 音楽:小杉太一郎 監督:小澤啓一

感想

■昭和初期の霞ヶ浦あたり、伊勢徳一家の親分が刺客に倒されると、養女節子(松原智恵子)は、実子が跡目を継ぐことを願いながら芸者家業を続けているが、敵対する舛川組が弟を籠絡して漁業権の委任状を騙し取り、親分を殺したのが心を通じ合った小田切田村高廣)という流れ者だと知ると。。。

■日活も崩壊寸前になると松原智恵子がおんなヤクザを演じる。と思いきや、松原は最後の最後まで芸者のままで、組の跡目を継ぐこともないのだった。逆に意外な展開。藤純子の線を狙ったのかと思いきや、そうでもないというのはさすがに中途半端で、途中からかなりお話の求心力が低下する。

霞ヶ浦近辺を設定して、流麗なロケ撮影を駆使した映像は、この時期には珍しい古典的な構図で意外にも贅沢感がある。美術セットもかなりしっかりとしたもので、ロマンポルノ転向寸前にしては妙にリッチな感じなのだ。

松原智恵子がおんなヤクザにならないので、途中から梶芽衣子を投入し、彼女が文字通り体を張って力演するが、どうしても見せ場が中途半端ですね。脚本の問題だと思いますが、湖に転落して死んだかとおもいきや、何もなかったように最後の見せ場に復帰するけど、劇的効果として面白くならないのが困りもの。

■近所の飲み屋の親父が生き別れた実父だとわかるエピソードとか、単に古臭いだけで劇的効果も薄いし、後半は調子がでない。わざわざ加藤嘉が演じるが、どうも映えない。松原智恵子はみずみずしく綺麗だし、田村高廣のごきげんな演技も見どころなのに、尻すぼみなのは全部脚本のせいだ。棚田吾郎は時々目が覚める傑作を書くが、本作は凡作でした。

参考

▶こうして見ると、棚田吾郎の打率は何割くらいだろうか。傑作もあるけど、結構ハズレも多いですね。
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