梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ公演『まほろば』

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■作:蓬莱竜太、演出:日澤雄介、出演:高橋惠子、早霧せいな中村ゆり、生越千晴、安生悠璃菜、三田和代

■久々に楽しい演劇を観ましたよ。NHKのプレミアムステージで観ました。2019年4月の梅田芸術劇場公演の録画で、蓬莱竜太が岸田國士戯曲賞を受賞した作品の再演ですね。

■長崎の田舎町、夏まつりで男衆が家を空けて4世代の女たちだけが家に残された空間で、女たちの世代を超えたガールズトークが展開される。蓬莱竜太は当然男ですが、女たちの明け透けな会話がビビッドに響く、愉快で楽しい演劇になっている。なにしろキーワードは「閉経」だ。

■そして、基本的にコメディなのだ。その昔、想像妊娠を扱ったテレビドラマが山程あったわけですが、あれを逆にしたコメディと言えますね。なので、全然、堅苦しい芝居ではない。男衆が文字通り「まつりごと」に勤しむ間に、女たちがいかに家を守り、血脈をつないできたかということが描かれる。

早霧せいなは当然元宝塚の男役スターで、骨組みが大きいので、東京でバリバリ働くキャリアウーマン風に見えるし、コメディ要素は得意なのでイキイキしている。ストレートプレイは初挑戦だったらしいが、全く危うげがなくて、さすがの貫禄。東京で働くとことは女ながらに男化することに近く、元宝塚男役を起用したのも、そこに意図があるだろう。そして、深夜に泥酔した彼女は突然庭に降りて穴を掘り出す。

■そもそも、精神的に追い詰められた男たちは、決まって穴を掘り出すという風俗が世界的に観察されており、この人類のオスの本能を踏まえて、彼女がすっかり男化しており、あるいは男社会にそういうふうに追い詰められていることを示す。例えば、この映画のケヴィン・ベーコンを見れば、このあたりの含蓄が見えてきますよ。蓬莱竜太が観てるかどうかは知らんけどね。
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■一方二十歳の娘を持つ妹役が中村ゆりなので、なんとなく時空のパースペクティブが狂うのだけど、彼女もそろそろ40歳が近いのだね!いつまでも『パッチギ! LOVE&PEACE』でもないけど、見た目が全然変わらないので、娘と比べてどっちが若いのか混乱するというありえない事態に。。。

■おばあさんを演じるのが三田和代岸田森の晩年のパートナーで、その臨終を看取ったはずの人。当然ながらすっかりおばあさんですが、まだまだ現役邁進中です。もともと上手い人なので、要所要所で爆笑を誘う美味しい役。2008年の初演では高橋惠子が演じた母親役をやったらしい。

■ちなみに、岸田戯曲賞は特定の作品の善し悪しではなく、新人劇作家のある程度の仕事の積み重ねで、そろそろ次はこの人にあげないとね、という感じで優秀な人が順繰りで受賞するらしい(某受賞者談)から、本作だけが突出していたというわけではないと思うけどね。

参考

早霧せいなって、確か観たよあなあと思えば、これを観てました。『幕末太陽傳』!
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なぜか蓬莱竜太の演劇は結構観てるのだ。ひとえにNHKのおかげです。もっとやって。
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