女の視点から戦争を相対化する!けど、冗長なのが玉に瑕!『執炎』

基本情報

執炎 ★★☆
1964 スコープサイズ(モノクロ) 120分 @アマプラ
企画:大塚和 原作:加茂菖子 脚本:山田信夫 撮影:間宮義雄 照明:吉田一夫 美術:松山崇 音楽:黛敏郎 監督:蔵原惟繕

感想

■日本映画名作100選に入ったりする関係で(といってもかなり昔の100選だけどね)、日本映画史的には必見の映画なので、過去にも観たし、アマプラに入ったので改めて観たけど、巷間言われるほどの映画だろうかというのが素直な印象。正直冗長に感じる。今平の『赤い殺意』と同じ感触があって、もっと刈り込んだほうがメリハリが出ると感じた。浅丘ルリ子の100本記念映画でもあり、芸術祭参加の文芸大作枠として2時間の番組として許されたのだろうが、逆効果じゃないかな。

■平家の落人部落の娘(浅丘ルリ子)が海辺の網元の長男(伊丹十三)と知り合って結ばれるが、男は徴兵されて重症をおって帰ってくる。右足切断を宣言されたものの、献身的な介護で奇跡的に直してみせるが、再び戦地に送られることに。。。

■基本的にドキュメンタルなロケ撮影が敢行され、間宮義雄らしくキャメラは自在に動き回る。企画は大塚和だし、細川ちか子や宇野重吉が重要な脇役で要所を締めるので、日活=劇団民藝のリアリズム路線。ただ、今平組の姫田組の超絶なキャメラワークを知っているので、どうしても見劣りしてしまう。でも、モノクロのステージ撮影による雪景色なんて、同時期の宮川一夫にも劣っていないと思うぞ。

■当時、若い監督はみんなヨーロッパ映画経由でシュールレアリズムにかぶれていて、ガチガチの生真面目派の浦山桐郎ですらそうだったのだから、感覚派の蔵原惟繕ももちろん例外ではなく、本作でも再び夫を戦地に取られることを知った浅丘ルリ子は唐突に能を舞い始める。もちろん、前フリがあるのだが、いかにも取ってつけたようなイメージだ。その傾向は『愛の渇き』でより先鋭化し、いったんお蔵入りとなったこの映画は、日本映画史に知られざる大きな影響を与えることになる。

■中盤の浅丘ルリ子の相当観念的な長台詞「女があれほど美しい顔したら、もうその次には気が狂うとるで。女は単純に見えて、心も身体も複雑なんや。」のあたりのはさすがに傑作で、おんなの執念、執炎のありようを文学的に説明してしまうし、源平合戦の頃と太平洋戦争が対比されて、その中でのおんなの変わらぬ視線が男たちの戦争を相対化する。その意味での批評性は万全なのだが、映像詩的な描写が延々と長すぎて、せっかくのテーマの構築が薄まってしまったように見える。勿体ないなあ。

■夫の戦死を知って浅丘ルリ子が幽鬼のように彷徨う場面も出色で、戦争が始まってからは赤紙を配達し、戦死公報を配達する宇野重吉と隧道の中で遭遇する場面は傑作。劇団民藝の総帥である宇野重吉が死神のような不吉な役柄をリアルに、朴訥に好演する。

■ちなみに、百恵&友和の『炎の舞』って、本作のリメイクだったのだね。未見だけど!ホリプロの百恵&友和映画のリメイクに対する執念って、ある意味で凄い。
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