イントゥ・ザ・ワイルド ★★★

INTO THE WILD
2007 ヴィスタサイズ 148分
DVD

■大学を優秀な成績で卒業した青年が自由を探しに旅に出てアラスカで餓死するまでを、実話をベースに描き出す青春映画の大作。ヒッピー魂の末裔(?)ショーン・ペンらしい企画を自分で脚本、監督した意欲作でもある。何しろこんなパーソナルなお話を二時間半の映画に仕立てるのだから、その意気込みは半端でないことは理解できる。

■アラスカにいたる旅の途中で様々な人々に出会って、ちゃんと成長してゆく過程が丁寧に描かれるし、旅には冒険も恋も歌も盛り込まれるので、劇映画としては非常にサービス満点で十分に面白い。けれど、それ以上の感動があるかといえば、疑問。たとえば山田洋次の『15才 学校Ⅳ』も良く似た話だが、あちらの方がよほど感動的だった。あっちは完全にフィクションなので最後にちゃんと帰ってくるからね。そこが良い。

■多分、この素材を二時間半に仕立てたショーン・ペンは、本当は三時間映画にしたかったのではないだろうか。デビッド・リーンの映画のように。実際のところ、キャメラワークももっとガチガチのフィックスにして、堂々たる三時間映画として観たかった気がするのだ。毒草に中毒して孤独に餓死する青年というミニマム過ぎるお話を内省的な三時間スペクタクル映画に仕立てるという倒錯的な実験には興味津々なのだ。まあ、あと30分足しとけってことだよ。

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