最後まで意味不明だった残念作『海に眠るダイヤモンド』

基本情報

日曜劇場 海に眠るダイヤモンド(全10話) ★☆
脚本:野木亜紀子 音楽:佐藤直紀 演出:塚原あゆ子福田亮介、林啓史、府川亮介

感想

■第2話まで見た時点で、何がしたいのか不明瞭なドラマだったので、大丈夫かなと危惧したが、最終回まで見ても、結局意味不明だったので、ボタンの掛け違いが解消されずに終わった失敗作。

軍艦島こと端島の情景を描くVFXは秀逸だったけど、海底炭鉱の過酷な労働実態を描ききれていない。炭鉱といえば『空の大怪獣 ラドン』でリアルな坑内を描いていたのだが、外観よりもこちらに金をかけるべきだった気はする。炭鉱物には欠かせない労働争議もあっけなく過ぎ去り、土屋太鳳の長崎での被爆と神の沈黙の件も、え?それで終わり?マジで?という生半可なもので、正直驚いた(もちろん悪い意味で)。それで何か描いたつもりなのか?出火に伴う海底坑道放棄の苦渋の決断のあたりはユニークな素材でもあり、ちょっと良かったけど、もっと良くなるはずだよなあ。

■過去と現代で神木隆之介が二役をやった意味も希薄だし、宮本信子は何者かという引きも、正直全くどうでもいいレベルで有効に機能していない。TBS期待の敏腕ディレクターである塚原あゆ子も、正直ちっとも良いとは思えず、なんだかなあというのが素直な感想だ。もっと素直に年代記を描いたほうが、ドラマとしてはずっと冴えると思うがなあ。神木隆之介のホスト設定は、完全に単純な設計ミスで、全く有効でなかった。現代のシーンはひたすら辛かったね。

■正直、役者たちもなにをどう思って演じればいいのか困惑したのではないだろうか。最近絶好調だった杉咲花がいまさら演じる役どころではなかったし、清水尋也もちっとも冴えなかった。唯一、土屋太鳳がすっかりスリムになって、正統派美人女優の貫禄を見せた。でも長崎原爆の扱いは、ホントに中途半端で、下手に手出しするべきではないと感じた。『虎に翼』もそうだけど、中途半端に大きな問題を扱うべきではないと思う。ドラマとして表に出して完全に消化するのか、もっぱら登場人物の背景として淫靡に機能させるのかを選ばなければならないのだと思う。昔の東映映画なんて、そういう塩梅が上手かった。(というか、そんな扱い方しか、やりようがなかったのだけど)

野木亜紀子は映画『ラストマイル』のヒットでも注目されたし、WOWOWでの『フェンス』の偉業の後ゆえに過大な期待を抱いてしまったけど、どうもお疲れではないのか?

参考

このドラマが凄かったのは、北野拓Pの善導があったから?
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
これなんか、良くできていたのになあ。
maricozy.hatenablog.jp

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