■原作・緒川 怜、脚本・吉本昌弘、撮影・朝倉義人、監督・橋本一
■出演・椎名桔平、財前直見、塚本高史、甲本雅裕、長谷川朝晴、菅原大吉、高岡早紀、平田満、伊武雅刀、小林稔侍
■幼女誘拐殺人犯は冤罪なのか?別の連続幼女殺害事件で服役中の死刑囚が真犯人なのか?警察が捜査ミスを隠蔽するために別の犯人をでっち上げたのか?果たして真相はどこに?
■という2時間サスペンスで、なかなか盛りだくさんな内容なのだが、展開のタッチが土曜ワイド仕様、要は年寄り向けなので、後半は普通のサスペンスドラマに終始する。財前直見がやる気満々で冤罪を主張しはじめるところから、いかにもワケアリ気なので、魂胆ありありに見えてしまうのは勿体無いなあ。もっと自然に登場させればいいのに。
■しかし、連続幼女殺人犯(死刑囚)のエピソードが普通の2時間サスペンスにしては異様にリアルに描かれ、この部分の人間ドラマに厚みがあるのが美点。演じる甲本雅裕が相変わらず上手いので、人非人である死刑囚の中にある不思議な人間味が皮肉な形で綴られて非常に心に残る。このあたり、今回の橋本一のチャレンジだったに違いない。ペドフィリアでありながら自分の子供を持ち、ある日忽然と家族の前から姿を消す、この男の業の深さと、一方で死刑制度の残酷さを対置させて、単なる2時間サスペンスには終わらない強いメッセージを込めた意欲作ではある。