不滅の熱球
1955 スタンダードサイズ 105分
BS2録画
原作■鈴木惣太郎 脚本■菊島隆三
撮影■中井朝一 照明■森茂
美術■北辰雄 音楽■斎藤一郎
監督■鈴木英夫
■巨人軍の澤村栄治が絶頂期に兵役にとられ、腕を負傷して帰国後苦労して現役に復帰するが、ふたたび前線に送られてフィリピンで戦死するまでを事実に基づいた創作を交えて真摯に描き出す野球映画の傑作。
■アメリカ映画には野球映画の傑作が多いのだが、日本映画でもこうした傑作が作られていたことに驚く。あまり知られた映画ではないが、これは傑作だ。
■戦争に運命を翻弄されたひとりの野球人を主役として、戦争によって人間がどんな目に合わされるのか、どんな苦しみを舐め、そこから立ち直るのがどれほど困難なことか、を丁寧に表現する。史実と異なる部分が少なくないようだが、ドラマとしては非常にシンプルで力強い語り口に引き込まれる。
■まだ初々しい司葉子が親の反対も苦にせず、これぞと思い決めた男を追って遥か大連まで追いかける積極的な娘を演じて出色。復員後にペースが戻らず落ち込む澤村を、「ファンは打たれるあなたに失望しているんじゃないわ。打たれてもファイトを燃やさないあなたに失望しているのよ」と励ます場面は素直に感動的だ。
■中井朝一の繊細なモノクロ撮影が絶品の素晴らしさで、モノクロ映画の美しさを堪能できる。