非情都市
1960 スコープサイズ
BS2録画
脚本■井手雅人
撮影■逢沢 譲 照明■金子光男
美術■河東安英 音楽■池野 成
監督■鈴木英夫
社長襲撃事件を追う主人公(三橋達也)は、ヤクザ(平田昭彦)から実行犯(中丸忠雄)を匿ってくれるよう依頼され、スクープ欲しさに引き受けるが、うまく行ったかに見えた計画は徐々に計算違いを露呈させ、警察に追い詰められてゆく・・・
安藤組による横井英樹襲撃事件に取材し、実際に逮捕された新聞記者の手記をもとに映画化された、東宝の健全路線を逸脱した社会派ピカレスク。
人間のエグさを描かせて定評のある井手雅人の脚本が冴え渡り、主役の三橋達也の暴走ぶりがリアルに、鮮烈に、そしてハードボイルドに描き出される。鈴木英夫の演出も、三橋達也の演技も最高潮で、ひたすら圧巻な見せ場が続く。
ヤクザの親分を演じる平田昭彦のカッコ良さも特筆ものだし、三橋の直属上司を演じる稲葉義男もいつになく台詞と見せ場が多く、役者としての力量を遺憾なく発揮して、三橋との直接対決の行き詰る舌戦はまさに圧巻といえるだろう。ここまで激昂する稲葉義男は珍しいのではないか。
物語のモチーフとしては、大映の「黒の」シリーズに似ているのだが、こちらのほうが早いというのも発見であった。鈴木英夫は増村保造の同年代人なのだ。
三橋の腐れ縁の彼女が司葉子で、これも東宝らしくない爛れた関係とエロティックな描写で司葉子の女の肉体を強調してゆき、しかしあくまでもドライに二人の関係を見つめ続ける。こうした部分の斬新さは確かに鈴木英夫の再評価の必要性を実感させる。
三橋達也の現代人としてのあくどい生き方を徹底的に生々しく、リアルな息遣いをうつしとった鈴木英夫の演出は、東宝という枠組みを明らかに逸脱している。