極道の妻たち・地獄の道づれ

極道の妻たち・地獄の道づれ

基本情報

2001/VV
(2002/2/16 レンタルV)
脚本/高田宏治
撮影/水巻祐介 照明/沢田敏夫
美術/野尻 均 音楽/大島ミチル
監督/関本郁夫

感想(旧HPより転載)

 全国の極道社会の大同団結を実現するという口実で大阪に乗り込んできた関東ヤクザ(中尾彬)の真の狙いは大阪を仕切る地場組織の仕切るシマを奪い取ることにあった。三代目亡きあと四代目を期待された組長(宅麻伸)を陥れて警察に逮捕させた関東ヤクザたちはトップを狙う急進派(草刈正雄)と野心家のその妻(とよた真帆)をけしかけて跡目を継がそうとするが、組長の妻(高島礼子)が名代を名乗って彼らに対立する。

 その他石橋蓮司尾美としのり西岡徳馬江波杏子、、清水紘治、雛形あき子、中本奈奈、六平直政北村和夫竹中直人(特別出演)という超(?)豪華キャストで贈る高島極妻シリーズ第四弾だが、かなり息切れが見える。

 特に美術装置の質感の薄っぺらさは高島シリーズ当初の意気込みは今いずこといった有り様で、耽美派野尻均の意匠が十分に生かされたものとはいいがたい。映画的な映像表現の厚みは明らかに退行しているというしかないだろう。

 高田宏治の剛腕ぶりが顕著な脚本も高島、とよた、雛形の三人の極妻を十分に生かし切れておらず、第二作「死んで貰います」の高島、東ちづるの確執ほどの劇的な充実感は味わえない。借金に追われて心中した両親を持つとよた真帆の成り上がりぶりの痛快さが草刈正雄の敵討ちに変転するあたりの見せ場も案外生きていない。そもそも、とよた真帆に色気が無いのが…

 むしろ、関東ヤクザの後押しで大阪のトップを狙いながら極道としての腹が据わっていないせいで結局は使い捨ての鉄砲玉程度のことしかできない不甲斐なさを噛みしめる草刈正雄の人物造形が今回の主眼ではなかったかと思われるふしもあるが、草刈正雄が適役だったかどうかは疑問も残る。取って付けたような無謀な襲撃で華々しく最期を飾らせるよりも、地味に自殺するとか、逃げようとして無惨に殺されるとか、もっと惨めさを強調してほしいところだが、草刈正雄をキャスティングした時点で役の性格が変わってしまったのだろう。こうした極妻シリーズにおける男の不甲斐なさの系譜の中でも第二作目の原田大二郎には及ばなかったのはそのためだろう。

 ただ、三代目霊代(江波杏子)を迎えての幹部会議の場面や、関東ヤクザが相談役の北村和夫を籠絡しようとする料亭のシーンなどはベテラン俳優とベテラン演出家がじっくりと劇映画の醍醐味を描き込んだなかなかの名シーンで、映画全体の出来は措くとしても、高田宏治の作劇のケレンを十分に堪能できる。

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