日本の首領 完結篇 ★★★

日本の首領 完結篇
1978 スコープサイズ 131分
DVD
原作■飯干晃一 脚本■高田宏治
撮影■増田敏夫 照明■増田悦章
美術■井川徳道 音楽■黛敏郎伊部晴美
監督■中島貞夫

 遂に日本のフィクサー大山(片岡千恵蔵)が動き出し、サイパンの観光開発を目論む関東同盟の大石(三船敏郎)と佐倉(佐分利信)の両雄を両天秤にかけて、自身の反共防衛信念の貫徹を目指す。サイパンで発生した賄賂強奪事件をめぐって、証拠の領収書を奪い合う中、大石を追い落とした大山に恐怖した佐倉は娘婿の一宮医師(高橋悦史)に、大石の謀殺を迫る・・・

 「日本の首領」シリーズ堂々の完結編。とはいいながら、グアム、サイパンロケに俳優は一切同行せず、全てをスクリーンプロセス、しかも思いっきり精度の悪い合成カットで処理するというセコさがいかにも東映らしい。賄賂強奪犯のヘリが崖に突っ込んで爆発するシーンは、堂々とミニチュア撮影で描き出されるが、これは当時のことだから成田亨の仕事だろうか。

 なにしろ本作は中島組の大幹部が死に絶えたあとなので、顔ぶれの寂しさが拭えず、唯一車椅子の菅原文太が経済ヤクザとして暴れまわるが、結局本シリーズの裏の主役はヤクザではなく、ヤクザ社会と血縁関係をもってしまい、ヤクザではないのにファミリーに忠誠を誓ってしまった民間人医師、高橋悦史であり、本作は彼の苦悩が最終テーマとして設定される。第一作で鶴田浩二を手にかけて、本職のヤクザよりも惨い倫理的破綻を背負った非人間的な存在と定義付けられてしまった彼の、その後の人生がクライマックスとして描き出される。だから、3部作のラストは三船敏郎高橋悦史という、非東映的な両俳優の対立で締めくくられることになるのだ。

 前2作が佐分利信の物語であったのに、本作では三船敏郎に焦点が結ばれ、しかも終盤で高橋悦史がクローズアップされるため、どうしても錯綜の印象があり、前2作に比べるとオールスター映画としての愉しみにも乏しいので尻すぼみといわれしまいそうだが、岡本喜八山本薩夫の映画で屈折したインテリの生き方を演じ続けてきた高橋悦史の悲劇的な(自業自得だが)人生が、本シリーズの真のテーマであったと言えないだろうか。それは、正統的なインテリとして東大を卒業しながら、心ならずも(?)ヤクザ映画を量産せざるを得ない高田宏治中島貞夫の”自虐の詩”と言えるのではないか。

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