基本情報
女の賭場 ★★★★
1966 スコープサイズ 84分 @DVD
感想
■昔テレビで観たときはカット版だと信じたのだが、実はオリジナル版の時点で不自然なシーン繋ぎがいくつかあり、劇場公開版が相当強引な編集になっていたようだ。オリジナルの脚本が読みたいなあ。
■再見すると、とにかく傑作で、あまり正当に評価されていない気がするのだが、田中重雄は凄い腕を持っている。特撮ファンはそのことを血とエロスのノワール怪獣映画『ガメラ対バルゴン』で知悉しているのだが、本作を観ると、ホントに名人。本作の江波杏子はむしろ『ガメラ対バルゴン』のエキゾチックなエロスは禁じられていて禁欲的に描かれる。ヤクザと堅気の境界線上でなんとかバランスを取ろうとする娘を鋭角でドライな色気で凛々しく演じる江波杏子は確かに不世出のキャラクターだ。若尾文子ではさすがに無理だよなあ。
■対する現代ヤクザの渡辺文雄も素晴らしくて、大島渚の映画よりずっと生き生きしているし、色気がある。子どもの頃から差別されて生い立った屈折した心情を滔々と吐露するナイトクラブの場面は台詞も演出も音楽も最高で、見事な名場面。情婦のダンサーがキツイ視線を投げかけるけど、結局台詞もない。なのに、劇的にはちゃんと成立しているし、心理描写になっている。田中重雄、凄いと思う。
■一方で完全に単なる脇役なのに何気ない小芝居で小悪党ぶりを発揮する藤山浩二の拘りには感心する。夏木章も重要な役で登場するし、『ガメラ対バルゴン』のファンは必見ですよ。そして、ラストの江波杏子の表情と音楽の転調で活劇映画のクライマックスが成り立ってしまう奇跡に震えてほしい。(←池田憲章か!)