『皆月』

基本情報

皆月
原作・花村萬月 脚本・荒井晴彦
撮影・石井浩一 照明・櫻井雅章 
美術・山崎輝 音楽・遠藤浩二
監督・望月六郎

感想(旧HPより転載)

 「みんな月でした。我慢の限界です」という置き手紙を残して妻(荻野目慶子)に失踪された中年の男(奥田瑛二)は退職金目当てで接近したソープ嬢吉本多香美)と暮らし始めるが、すべてに決着をつけるため、チンピラやくざの義理の弟(北村一輝)を加えた3人で妻の行方を求めて能登に旅立つ。

 「新・悲しきヒットマン」「鬼火」等で好調の望月六郎だが、今回は重要な見せ場になる後半の能登でのロケーションが十分に機能せず、荒井晴彦が得意とする前半の比較的濃密な中年の男と若い風俗嬢との性愛ドラマのリズムを受け止めることができなかったのが、もっとも大きな疵だろう。そう、これはVシネマ的なやくざ映画ではなく、あくまで日活ロマンポルノを継承する路線として企画された映画であり、脚本も演出もそうした男と女の営みにこそ意が注がれている。

 とすれば、なんといってもこの作品の見所はレナこと吉本多香美の役の上での性的な奔放さにある。中年男と威勢のいいチンピラ相手にここではつまびらかにできないような、あんなこと(?)やこんなこと(!)を大胆に繰り広げるレナ、いや吉本多香美は、その女優としての演技の質云々よりも、もっとロマンポルノ的にセンセーショナルな話題性を備えているはずだ。

 かつてのレナ、今やNHKの顔(?)の吉本多香美は遅れてきたロマンポルノ女優として正しく認知されるべきなのだ。
(2000/9/2 ビスタサイズ V)

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