クドカンの最近のドラマ『不適切にもほどがある!』『季節のない街』を観たけれど…(雑感)

■『不適切にもほどがある』はとにかく放送業界にくすぶるコンプライアンス重視(過剰適応)の姿勢が制作現場をいかに息苦しくしているかを、遠慮なしにぶちまけた(業界の内部告発?)ところが圧巻で、その企画力に驚嘆した。クドカンもそうだけど、磯山晶Pありきの企画力だと思う。そのテーマ設定の蛮勇が全てだった。

■#3が出色で、八嶋智人の一人舞台が弾けまくって、秀逸なシチュエーション・コメディだった。けど、シリーズ全体としては疑問がおおくて、特にミュージカルの趣向は滑りまくって、終始寒々しかった。シリーズ構成としては、尻すぼみという印象だ。様々な賞を受賞しているけど、明らかに過大評価で、ドラマとしての出来は正直苦しい。放送業界内で、行き過ぎたコンプライアンスの問題が、いかにアンタッチャブルな問題だったかを示していると感じる。そのガス抜きになったことは事実だろう。

■そういえば本人役で登場する小泉今日子がほとんど素のまま、年齢相応の年格好で登場するのも痛快だったな。年取れば、年相応の外見になるのは、人間の当たり前の営みで、それを誤魔化そうとするのは、本当は見苦しいことなのだ。ということを訴える(多分)。それで良いと思う。

■ちょっと気になったのは、映像の質感が昔ながらのスタジオドラマのルックだったことで、敢えてだと思うけど、貧乏くさく見えないこともない。どうせやるなら、もっと昔っぽいビデオルックに撮ればいいのに。

■『季節のない街』も全部観たけど、これもあまり褒めるところがないなあ。山本周五郎の原作ありきなので、そこから勝手に飛躍することはできないのだろうけど、シリーズ全体の構築に妙味がないと感じましたね。大震災と大津波を「なに」なんて言わずに、そのまま出せばいいのに。敢えて持って回った言い方にする意味が感じられなかった。スタッフも映画並みだし、豪華キャストなんだけど、空回り感が拭えない。。。

■先日始まった『新宿野戦病院』はいかにもフジテレビっぽいドラマで、演出が河毛俊作なのでびっくりしたなあ。まだ現役だったのか。小池栄子のオーバーアクトも気になるけど、本来はナチュラルに演技は上手くて、何でも器用にこなす人なので、今後の変化に期待しましょう。『季節のない街』よりは面白そうだけど、どうでしょう?仲野太賀も、こちらのほうが素直に良いよね。

■そういえば、季節のない街=どですかでん、新宿野戦病院=赤ひげと、なんでクドカンはそんなに黒澤明に拘るのかな?

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