個人的にはホラー映画に見えた、絶妙にナイーブな問題作『こちらあみ子』

基本情報

こちらあみ子 ★★★
2022 ヴィスタサイズ 104分 @アマプラ
企画:近藤貴彦 原作:今村夏子 脚本:森井勇佑 撮影:岩永洋 照明:岩永洋 美術:大原清孝 音楽:青葉市子 監督:森井勇佑

感想

■予告編では、「風変わりな女の子」と括っているし、原作小説でもそういうカテゴリーとして読まれているらしいけど、映画の主人公はどう見ても何らかの発達障害があり、本人はまだ生きづらさの自覚すらないけど、そのかわり、周りにいる家族が壊れてゆく。その意味では、純粋なホラー映画だと感じたし、終始不穏な空気が蔓延していて、観ていて非常に辛い映画だ。児童映画や青春映画をイメージしていたが、全く違った。例えば相米慎二の『お引越し』とかね。似た感じをおぼえたのは、横浜聡子の『ウルトラミラクルラブストーリー』だ。あれは、ホントにひどくて狂っていたけど、通底する部分がある。なぜだろう?

■監督の森井勇佑という人は監督デビュー作らしけど、なかなかの大器であることは間違いないようだ。明らかに相米慎二に影響を受けているだろう。よくも、こんな信念に満ちた演出が可能だったものだと感心する。ブレがない。自信に溢れている。撮影と照明を兼務した撮影監督スタイルの映像設計もかなり秀逸で、撮影賞レベルの仕事。そして、主演の子役を発見したことで、映画の方向性が決定的になった。

■でも監督の演出方針としては、単に「風変わりな子」という演技づけではないだろう。「純粋」で「風変わり」な言動によって周囲の人間たちを疲弊させてゆく、あみ子の個性がどんなものなのか、何に由来するのか、それを正確に理解して、その理解に基づいて演出しているはずだ。なにしろ、自分で脚本も書いているからね。医学的なアドバイスも受けているだろう。

■だから全然「大丈夫じゃ」ないのだけど、原作はそれで終わってしまっているので、映画もそのとおり踏襲するけど、ホントに大丈夫じゃないですよ。いろいろと。原作者の今村夏子もわかっていて、そう書いているはずだけど、なんとかしないとまずいと思いますよ。本人も周りの人間もね。

■と、分別くさい大人の感覚だとそうなるんだけど、どうも映画の作者たちは、自分も子供の頃はこんなだったから特別なことじゃないし、という感覚で描いているらしい。。。アートな業界に生きる人々にとっては、あみ子はただの「風変わりな子」程度でしかないのだ!凄いなあ…アートな人。



参考

あみ子はきっとこんな風に成長するのだろう。(しらんけど)
maricozy.hatenablog.jp
一応紹介しますけど、観なくていいです。不愉快になるだけです。でも、やっぱり似てるんですよ。困ったことに。
maricozy.hatenablog.jp

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