日本の黒い霧は今もわれわれの心を覆っている!NHK未解決事件File.10『下山事件』


■みんな大好き、日本の黒い霧の大本命、下山事件の謎を追って、NHKが新資料を発掘!というドラマとドキュメントの二本立て。でも、事件の謎がはらむやばさとかロマンとかでいえば、帝銀事件のほうが(妄想が)燃えるよね。一部で真犯人と目された韓国人の李中煥と米国から脅迫されて途中で事件の追求から脱落した読売新聞記者の視点が新鮮。

■でも下山事件はなにしろ陰謀の錯綜の仕方が半端でなくて、事件の構図を描いてみても、あまりの複雑さにめまいを覚えるほど。GHQ、G2、キャノン機関、東京横浜CIC、二重スパイ、特務機関等々がそれぞれの思惑で、事件に関与する。ソ連の策謀なのか?アメリカの暗殺計画なのか?旧帝国軍出身の特務機関は何を画策したのか?児玉誉士夫なんて、米国が次の戦争に国鉄を使おうとして反対した下山総裁を暗殺したと言い出すほど。

■ドラマ編はとにかく配役が小粒で、ホントに俳優陣の層の薄さを感じる。昔ならとりあえず大手の新劇人を集めれば成立した企画だが、最近はホントに役者がいない。佐藤隆太の老けたかには驚いたけど。誰だかわからなかった。それに松本清張役は竹中直人でしょ?どう考えても。そこで竹中使わないでどうするの?

■でも、テーマは明快だし、日本が敗戦後、(精神的にも物理的にも)真の独立国となっていないことなど、全くそのとおりなので納得はしますよ。そんなこと言うのはNHKのドラマくらいだけど。

■ドラマ編の演出は梶原登城。作は安達奈緒子という人で、ずいぶんストレートな物言いで、骨太だなあと思ったら、NHKの『透明なゆりかご』とかテレ東の『きのう何食べた?』で高評価を受けた旬な脚本家なのだった。いいぞ、もっとやれ!で 音楽はもちろん川井憲次。ちなみにプロデューサーに大橋守の名が見える。特撮大好きなNHKの名物ディレクターで、地方局でもオリジナルドラマを作り続けてきた執念の人だけど、東京に戻ったんだな。

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