コンプライアンス云々以前に、病気で血尿が出てる高校生に徹夜仕事させちゃダメ!集英社はホントにそれで良いの?『バクマン。』

基本情報

バクマン。 ★
2015 ヴィスタサイズ 120分 @DVD
原作:大場つぐみ小畑健 脚本:大根仁 撮影:宮本亘 照明:冨川英伸 美術:都築雄二 音楽:サカナクション VFXスーパーバイザー:道木伸隆 監督:大根仁

感想

■高校生二人が原作と作画を分担して漫画家デビューして、ジャンプの連載、さらにアンケート1位を狙いに行くが。。。

■というお気楽なお題をトントン拍子に綴る素朴に上昇志向な青春映画。それはそれで悪くないけど、第三幕がちょっと酷いので、さすがにびっくりした。原作漫画を短くまとめるのに苦労したのだろうけど、いくらなんでもこれはダメでしょう。10年前の映画とはいえ、いくらなんでも昭和元禄か?という雑さ。「友情・努力・勝利」という少年ジャンプの幼稚な(!)哲学を、なぜか無批判でそのまま劇化したために、えらいことに。

■いくらなんでも過労で血尿(しかも鮮血!)が出て入院している高校生が病院を抜け出して徹夜して漫画を仕上げるという筋立ては、コンプライアンス云々の借り物の胡散臭い概念を持ち出すまでもなく、厚労省的に、あるいま文科省的にダメでしょう。ほとんど鮮血状の血尿が出て入院しているのを抜け出して、連載の締切に間に合わせるという段取りをクライマックスに仕立てて、それをあたかも良いこと(それが「努力」?)のように描く。血尿舐めるなよ!というお話ですよ。それ努力じゃないよ!しかも、主人公は高校生で締め切りに追われて、授業中はずっと寝てるわけで、本末転倒も甚だしい。集英社の儲けにとっては好都合かもしれないけど、まだ学生なので、労働の前に学習ですよね、常識的には!これ完全に搾取の構造です!

大根仁の演出的にはノリノリで悪くないけど、脚本構成の思想がいくらなんでも雑すぎる。漫画家同士の対決をVFXのを駆使してイメージ的に映像化した場面も、プロジェクションマッピングなども使った、技術的には意欲的な映像処理ではあるけど、端的にいって要らないよね。幼稚過ぎる。

■こうして大根仁の映画を辿ってみると、『エルピス』は明らかにそれまでの段階とステージが異なる。大根仁はあれで、確実に階段を登ったのだ。自分で脚本を書いている限り、その僥倖は訪れなかっただろうね。

補足

■これとほとんど同じお話の映画があります。なぜかあまり話題にならない『ハケンアニメ!』です。こちらは間違いなく傑作なので、『ハケンアニメ!』を観てください。ちゃんと地に足がついていて、グサグサ刺さって、心が血を流します。凄いよ。
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