基本情報
SCOOP! ★★★
2016 スコープサイズ 120分 @DVD
原作:原田眞人『盗写 1/250秒』 脚本:大根仁 撮影:小林元 照明:堀直之 美術:平井亘 音楽:川辺ヒロシ VFX:菅原悦史 監督:大根仁
感想
■中年パパラッチ(福山雅治)の助手として期待の新人記者(二階堂ふみ)が補助につくと、徐々にスクープ撮影の醍醐味とともに、師匠の男っぷりにやられてゆく。でも男にはいかにもやばそうな情報提供者の男(リリー・フランキー)がつきまとい。。。
■というお話なんですね。もっと社会派映画かと思ったら、実はイーストウッドの『ルーキー』みたいな映画。新人記者の二階堂ふみの成長を描くお話なのだ。原作は原田眞人のテレフィーチャーで、当時観たと思っていたけど、実は観ていなかった。話題にはなっていたはずだけど、見逃していたらしい。多分黒木和雄が撮った『十万分の一の偶然』と勘違いしていた。でもこちらも傑作だったはず。岸田森が出てたから観たんだけど。
■そもそもなんで今さらこんな映画を思い出したかといえば、『エルピス』を一気見してしまったから。あれは大根仁がメイン監督だったのだ。でも、ドラマが語られるときに渡辺あやと女性Pの名前しか語られないのがちょっと気の毒。演出も良かったからだ。で、そういえば以前にこんな映画を撮っていたよなあと思い出した次第。なので、もっと社会派映画かと思ったのだ。でも全般的にみて、大根仁の仕事としても『エルピス』のほうが良かったよね!ちなみに、大根仁のイメージって、『ライオン丸G』(かなり良かった)とか『リバースエッジ 大川端探偵社』(これも良かった)とかの深夜ドラマの人ですね。まあ、NHK大河で『いだてん』も撮ってるけど、やはり深夜ドラマで映える人。その個性が『エルピス』にはマッチしたのだろう。
■そして、福山雅治の言動がそのまま『エルピス』の岡部たかしなのは意図せぬ偶然だろうか。渡辺あやは本作を見ずに脚本を書いていると思うけど、どちらも昭和バブル世代の残照を描いている。福山とリリーの男同士のいちゃいちゃ感をホモソーシャルに描くのも見どころで、明らかに精神的には男女関係よりも濃厚な経験を共有しているソウルメイト。その哀しい顛末がもっと胸に迫れば映画的に成功なのだが、クライマックスはさすがにちょっと苦しい。そもそも、連続殺人犯のスクープ撮影の場面の警察も没個性的であまりリアルではないし、クライマックスの警察の対応も同様。いろんな場面でリアル仕様ではない。減点材料としては、そのあたりの甘さがどうしても気になる。
■でも主演の福山雅治のゲスおやじぶりは痛快だし、リリー・フランキーの得体のしれない風情も良い味。オリジナルの原田眞人版では、なんと内藤陳(!)が演じたらしい。趣深いね。。。街なかで狂笑しながら拳銃ぶっ放す演技なんて、いまどき観られるとは思わなかったけど、というかリアルではないと思うけど、大根仁はあえて「狂鬼人間」の岸田森を引用したのではないか。(しらんけど)