尋常じゃないのはよく分かるけど、多分オレには神代は一生理解できない『かぶりつき人生』

基本情報

かぶりつき人生 ★★
1968 スコープサイズ(モノクロ) 94分 @アマプラ
企画:大塚和 原作:田中小実昌 脚本:神代辰巳 撮影:姫田真佐久 照明:岩木保夫 美術:音楽:眞鍋理一郎 監督:神代辰巳

感想

■うち(殿岡ハツエ)のおかあちゃん(丹羽志津)はデブデブの中年女やけど30代気取りのストリッパーや。あんなだらしない女にだけはならんとこ思たけど、わてもダンサー経由でピンク映画のスター女優になってもうたわ。けど、昔好きやったヤクザ者が訪ねてきて、ややこしいことになってしもうて。。。

神代辰巳の伝説的な監督デビュー作で、全くヒットしなかったので、以降干されてしまったという因縁の映画。でも、神代は恋女房だったスター女優の島崎雪子との離婚後、主演の殿岡ハツエに惚れ込んで再婚した。そっちには疎いわたしらオタク世代には全く理解不能なおとなの世界ですな。

■でもヒットしないのは事前にわかっていたはずで、併映が磯見忠彦監督の『ネオン太平記』という新人監督週間なのだから、はなから捨て駒のエロ路線で、なにしろ日活のスターは一切出ていない低予算映画。そういえば『ネオン太平記』もスタッフはイマヘイ組で、完全に被っている。日活では時々起こるけど、姫田真佐久のキャメラマン週間だったわけだ。殿岡ハツエはもちろん、強烈な助演の丹羽志津も無名だし、男優に至っては、見分けがつかないレベルの大部屋俳優が起用されるから困惑する。そこはホントに勿体ないと思ったけどね。もっと有名な男優を起用すれば、それだけで格が上がったし、劇的な効果も違ったはず。『ネオン太平記』にはカメオ出演を含めて有名人が(無駄に)いっぱい登場するから、その対比も寒々しい。

■母娘の相克を描くのかと思いきや、あくまで主演は殿岡の男性遍歴のほうで、母親に反発しながら男を渡り歩き、母親とは微妙に違う世界で成功しピンク映画のスター女優になるが、妬みから小娘に殺されそうになるし、昔好きだったやくざ者に刺されるし、それでもあくまで前向きに貪欲に生きようとする女の生命力を描くのだが、同じ姫田真佐久が撮っていてもイマヘイとは描きぶりが全く違うのが凄いところ。姫田キャメラマンはモノクロ撮影では多他の追随を許さず、本作も撮影の凝り方は凄い。前編ロケ撮影だけど、カラー撮影の『極道ペテン師』と比べてもレベルが違う。どれだけ粘ったのかと感じる本気の仕事。

■製作は大塚和なので、基本的にリアル路線だけど、この脚本は疑問があるなあ。大塚和なので劇団民藝の仲間たちを起用しそうなところ、その筋は全く無く、純粋な風俗エロ映画として忌避されたのだろうか。それにしても、神代辰巳の脚本はとてもオーソドックスなものではなく、正直あまり面白くないし、よく大塚和がOKしたなあと不思議に感じる。『ネオン太平記』のほうがまだ分かりやすいけど、あれは弟子筋の友田二郎の製作だ。

■でも、関西女の土性骨を描く女性映画かといえば、そうでもなく、妙にファッショナブルな映像や音楽だったり、当時流行の雰囲気映画的な狙いも散見されたり、土俗路線なのか、おしゃれ路線なのか、狙いが判然としない。その当たりも、神代辰巳の掴みどころのなさだ。


参考

『ネオン太平記』と同時上映だったのだ!
maricozy.hatenablog.jp
神代辰巳の映画はどうも掴みどころがなくてよくわからない。むしろテレビ映画のほうがしっくり来る。円谷プロでも撮ってるよ。
maricozy.hatenablog.jp
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