☢ネタバレあり☢逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!オレの戦争はまだ終わっちゃいない!『ゴジラ-1.0』

■『ゴジラ-1.0』の二回目鑑賞記です。イオンシネマ京都桂川(SC4)で観ました。スクリーン4に入るのは初めてかもしれません。でかいスクリーンで良い感じです。でも、ここはスコープサイズの場合、スクリーンマスクを動かさないので、額縁上映になるのは惜しいところです。

■改めて観ると、活劇としてちゃんとできていることに感心した。特に序盤の見せ場である新生丸とゴジラチェイス場面は上出来で、その勝因はちゃんと洋上ロケを行ったことにある。こうしたVFX大作の場合、ステージ撮影+デジタル合成で済ませてしまうものだが、海上の描写はどうしても不自然になってしまう。そのことは、満を持して登場する高雄の場面が、実際狭苦しいのと対照的だ。それに、終盤の海神作戦の艦上はデジタル合成だけど、一定のリアリズムで統一されて、違和感を覚えさせないのは、序盤の正攻法の海上ロケがある心理的効果によるところ。そこはとても立派なところ。

■以下の記事でいろいろと裏目読みをしたところだけど、母親の存在感はやはり小さくて、回想シーンなど必要ないね。むしろ、典子との関係性においては、やっと敗残の戦後から逃げずに典子に対しても正面から受け止めようと決心した途端に、ゴジラの上陸でその対象を奪われるという残酷な大構成がちゃんと効いているから、その間に二人の間に大人の関係がなかった心理的整合性としては不自然ではない。その意味では、銀座シーン、特に典子の最期はもっと凄惨でよかったかもしれない。(浜辺美波の悲鳴も足りないのだ)
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■主人公の心理の流れをかなり念入りに追っているのもゴジラ映画としては異色で、そこは山崎貴の努力の後がうかがえる。役者の演技のテンションがところどころ不自然なのが玉に瑕で、山崎貴の謎の演技指導なのだが、母親に言われるまま特攻を忌避するものの、意気地のなさゆえに大戸島部隊を全滅させてしまうトラウマにより死に傾く終戦後の心理から、たまたま背負うことになった疑似家族のために生きようと決意する心の旅路をかなり丹念に描く。主人公の心の旅路が映画の主題なので、主人公が意識を失うたびに画面はフェードアウトする。基本的に主人公が見たことだけが描き出されるのだ。そのアプローチもユニークだ。

■そういえば活劇としてのゴジラ映画では、手塚昌明のデビュー作『ゴジラ✕メガギラス G消滅作戦』が傑作なのだが、あれはゴジラに加えて、人間の悪役を設定したところが痛快だったし、大島ミチルのオリジナルのゴジラ音楽も傑作だった。再評価希望。
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■一番気になったのは、ラストの典子のあざ(ゴジラの紋章?)の件だけど、あれこそ主人公の悪夢という解釈でまとめればよかったかもしれない。オレの戦争はやっと終わったけど、やはり典子は銀座で死んでいて還ってこないという現実世界だ。おまけに主人公も爆心地銀座で大量に被爆しているから、後味は決して甘くないのだ。あるいは、あの謎のあざに主人公たちのその後に待ち受ける受難という含みを持たせたのかもしれない。

参考

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この映画の影響もあると思うんですよね。オレのベトナム戦争はまだ終わっちゃいない!
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