いまさら大英帝国賛美?の没入型体感映画『ダンケルク』

基本情報

Dunkirk ★★★
2017 スコープサイズ 106分 @アマプラ

感想

■第二次大戦中のダンケルクの戦いからの英仏兵士40万人の撤収作戦(ダイナモ作戦)を描く戦争映画大作。のはずが、実に奇妙な塩梅の映画なのは、クリストファー・ノーランが構想し、監督したから。普通の戦争映画ではない。ダンケルクの戦いからなんとか生還しようとする英国兵の姿と、撤収作戦を支援する戦闘機乗りと、撤収作戦に徴用された英国の民間商船の3つのエピソードを描くけど、ドラマらしいドラマはないので、評価が分かれると思う。

■基本的に、IMAXなどの体感型アトラクション映画として製作されていて、実際の撮影も大半がIMAXキャメラを使ったフィルム撮影。それは技術的には凄いんだけど、観客にとって何の得が??実際に戦場に投げ出されたような「没入感」を体感してくださいという趣向だけど、戦争映画なんだから、戦争に関するそれなりの意思表示は必要だろう。撮影監督は売れっ子のホイテ・バン・ホイテマで、叙情的かつドキュメンタルな秀逸な場面がいくつかあるものの、映画のドラマ性の弱さは如何ともし難い。もちろん、ノーランは最初からドラマ性は捨象しているだろうが。

■基本的にCGは使わない主義らしく、飛行機も艦船も実物を用意して撮ったらしいけど、特に空戦なんて実機で撮ると、まるで60年代の戦争映画みたいで撮れる画角が限られるので、途中でいい加減飽きる。特撮とかCGによって空戦描写は格段に進歩したのだ。ということを逆に実感する。本作のVFXはダブル・ネガティブが担当してるけど、3DCGによる被写体は生成していないようだ。

■そもそも、40万人がナチスの侵攻から脱出を待っているという事態なのに、そのスケール感が全く描かれないのは困ったことで、実物主義に拘泥するために、かえって作戦規模の呆れた膨大さを描ききれていない。


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