日活ニューアクションの傑作?そんなに良いか?『縄張はもらった』

基本情報

縄張はもらった ★★★
1968 スコープサイズ 94分 @アマプラ
企画:仲川哲朗 脚本:石松愛弘、久保田圭司 撮影:上田宗男 照明:森年男 美術:佐谷晃能 音楽:伊部晴美 監督:長谷部安春

感想

■8年ぶりにシャバに戻った寒河江小林旭)は病床の組長のいうままに「殺しの狭間組」に出向し、工場用地の買収を巡って新旧やくざが対立する新興都市に潜入して利権を横取りする計画に着手する。成功すれば縄張を自由にしていいと約束されたからだ。仲間たちは寄せ集めの半端者ばかりだったが、次々に抗争に斃れてゆく。。。

■脚本の石松愛弘が珍しく傑作と明言しているので観てみた。映画史的にも日活ニューアクションの傑作といわれているが、そんなに良いかな?ある意味、石松愛弘って、監督の好みに沿って上手く書き分けているなあと感心する。佐藤純弥と組むときは、いかにも純弥の好きそうなタガの外れた暴力性と左翼思想を打ち出すし、大映で増村と組むときは、増村が自分で書いたのかと思うほどの図式劇とメロドラマと独特の台詞を打ち出してくるし、その順応性の高さは異様なほど。

■本作は小林旭二谷英明宍戸錠のゴールデントリオの企画だけど、オーソドックスな撮り方ではなく、長谷部安春は全編を望遠レンズで狙う。多分公開当時はそこが話題になったのではないか。移動しながらの望遠、常に何かを舐めた構図。そのスタイルをかなり極端に推し進めた異色作ではある。前作は『みな殺しの拳銃』という極めて趣味性の高いハードボイルドだったから、

■ただ、ドラマとしてはそれほど斬新なものではなく、結局宍戸錠の「おれは惚れっぽいのが玉に瑕だが、男に惚れたのはお前がはじめてだ」という台詞などがニヤリとさせるが、日活らしい地方ロケの泥臭いドラマと洒落っ気が乖離していると感じる。むしろ、佐藤純弥的に完全にドライに暴力組織と個人の関係に絞ったほうが、個人的には腑に落ちる気がする。

■それにしても、地元農家の娘として登場する太田雅子(梶芽衣子)の扱いが酷くて気の毒だけど、この後、長谷場安春は野良猫ロックで彼女をフィーチャーして、すっかり名コンビになった。東映でさそりの4作目を撮るときには、長谷部監督ならと条件をつけたくらいだから。


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