これぞ京都妖怪地図!? 謎の怪力京女が東男を破滅に誘う『愛欲』

基本情報

愛欲 ★★★
1966 スコープサイズ 90分 @DVD
脚本:森川英太郎、佐藤純弥 撮影:西川庄衛 照明:元持秀雄 美術:北川弘 音楽:佐藤勝 監督:佐藤純弥

感想

■看板女優二人が競演する東映の女性大作。前々年の『廓育ち』で女性映画作家として突如異常に完成度の高い傑作を放っていた佐藤純弥が起用されるのは当然ながら、原作モノではなく、オリジナルシナリオというのが珍しい。しかも、東映とはあまり付き合いのない脚本家だし、曰く因縁がありそうな雰囲気だなあ。

三國連太郎が主演で、総合食品メーカーの宣伝課長として辣腕を振るっていたが、京都で、佐久間良子演じる謎の未亡人と出会い、愛欲の虜になる。未亡人は大学教授の妻で、男を情欲で取り殺すと陰口を聞かれるほど情の深い女で、三國は会社の大事な仕事をすっぽかし顰蹙を買うし、一方、三田佳子演じる銀座のママとは結婚間近だったが、関係は冷えてゆく。上司の丹波哲郎に厳しく諭されて京都の女は思い切ったはずだったが、女が訪ねてきて自殺の素振りを見せると、婚約を投げ出して、またずるずると熱海での情事に耽る...

佐久間良子演じる謎の未亡人の過去を取って付けたような回想シーンと丹波哲郎の説明台詞で納得させようとするが、この女の人間性が描けていないのが本作の欠点で、そもそも女性映画といいながら、実の主演は三國連太郎で、サラリーマン映画であるという妙な塩梅になっている。40億円の宣伝予算を背負って24時間働く男、三國が、色情狂の京女に、あての身体と仕事とどっちをとらはるのえ?と迫られて、会社という後ろ盾を捨てても自分自身に自立する意欲と甲斐性があるかと自問するお話になっているのだ。

佐久間良子は何を考えているのか全く計り知れないし、何をして食べているのかも未知な、古都に巣食う色情妖怪で、その証拠に何かに没頭すると、突如怪力を発揮して数珠を引きちぎったり、グラスを握りつぶしたりする。実際は旅館の女将なんだけど、全くそれらしく働いている場面がないのだ。演出意図としては、明らかに幽霊や妖怪をイメージしているに違いない。最後は無理心中で果てるのだが、だからホントはちゃんと生き残っているに違いないよ。実年齢はきっと500歳くらいだろうし。

■意外と純情で面倒見が良い銀座ママ三田佳子も『廓育ち』とは全く人が違うような平凡な演技で、手応えがないなあ。『廓育ち』のあの名演はなんだったのだろう。

■『廓育ち』と比べると富士フィルムの発色が大幅に改善されており、色彩の濁りが払拭されて透明度があがり、着物の色柄などに鮮やかな発色が生きている。リマスターの影響もあろうか、かなりこってりと色が乗っている。



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