ヤクザもフィクサーも俺が手玉に取ってやる!『続・組織暴力』

基本情報

続・組織暴力 ★★★
1967 スコープサイズ 90分 @DVD
企画:俊藤浩滋、矢部恒、栗山富郎 脚本:石松愛弘 撮影:仲沢半次郎 照明:銀屋謙蔵 美術:森幹男 音楽:佐藤勝 監督:佐藤純弥

感想

■第一作のヒットを受けてサクッとシリーズ化が決定した本シリーズ、さすがに東映らしく、第一作の受けた要素をすべて踏襲している。基本的には実際にあった暴力団の抗争事件をベースにしながら、保守系政治家の大物の悪巧みをターゲットとしながら、今一歩のところで警察の手が届かないもどかしさで終わる物語。ただ、あまりにも第一作を踏襲しているので新味が少ないじゃないか。

■表向きカタギの氷問屋から銀座商事へと会社を発展させながら保守系政治家の大物の弱みを握って、既存ヤクザ組織を飲み込もうと野心を燃やす男が渡辺文雄で、実質的に本作の主人公。なのだが、この男の来歴やその真情を描こうとしないから、最終的に何がしたかったのかよくわからないまま凶刃に沈んでしまう。この兵藤という男の人間性を描かないとこの映画の核が見えてこないのに、それを避けているのは何故か。

■例えば同じ渡辺文雄が悪役を演じて、演技も演出も撮影も高水準で見事だった『女の賭場』なんかと比べると、そのことがよく理解できる。この悪役が何を目指すのか、その訳は何なのか、どんな出自なのか、そこがサラッと描かれないとキャラクターが完成しないだろう。本作の兵藤というヤクザ以上のヤクザ者はユニークなキャラクターでカッコいいのに、最終的な暗殺が悲劇として浮かび上がらない。あくまで悪役なのでヒロイックに死なすなよという会社からの圧力があったのだろうか。

■そして、本作を観ると、実録路線前後の東映映画の技術的クオリティの低下の方向性が大方出揃っているのがわかる。『廓育ち』なんか、すべての技術パートが伝統的で丁寧な、驚くべき仕事ぶりだったのに比べ、本作ではロケ主体で、舞台装置も組事務所やバーといった見栄えのしない、美術部の工夫の見せ所の少ないものだし、乱闘主体なので緻密な照明なんて必要ないし、実際、病院の廊下のシーンの美術セットなんてペラペラな質感で、ああこれがこの頃の、そして実録路線が終焉するまでの、東映映画のクオリティだったなあと変に懐かしく感じいった次第。美術セットは、ホントにテレビのコント番組レベルに安っぽいからね。

キャメラがよく動くのは佐藤純弥の注文で、本来キャメラマン仲沢半次郎は、天皇と呼ばれる宮島義勇なんかと兄弟弟子の正統派で、フィックスでガッチリ撮りたい人なので、初コンビの『陸軍残虐物語』ではまだ抵抗があったらしいが、本作ではラフなズーム撮影や、円形移動なども多用して、激しいキャメラワークを見せる。つまり、実録路線の映像スタイルはすでにおおむね完成しているのだ。そのルーツは、実は伊藤大輔の演出スタイルにあり、「移動大好き」と呼ばれる静止しないキャメラワークを佐藤純弥が意図的に踏襲したものなのだ。つまり、東映実録映画のスタイルには、驚くべきことに、時代劇映画の泰斗、伊藤大輔の映像スタイルが反映されているのだ。

丹波哲郎の正統派ヒーローとしての活躍はこの頃から本格的に始まるが、演技的にはまだ恰幅の良さが出ておらず、意外と硬い。セリフの語尾が妙に尻上がり気味で軽くて、後年の丹波節に比べると全くもって説得力に欠ける。丹波節は一日にしてならず、だ。そもそも自分は演技が下手なんだと告白するくらいの神経の細い人なんだけど、態度はデカイので、新劇出身で正統派の演劇教育を受けた金子信雄なんかには随分現場でイビられて腐っていたらしい。やっぱり、時期的にはこの後の007への出演あたりで自信を深めたのかなあ。

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