『ワイルド・スピード』

ワイルド・スピード
(THE FAST AND THE FURIOUS)
2001/CS
(2003/9/13 レンタルDVD)

感想(旧HPより転載)

 頻発するトラック強盗の犯人がストリートレーサーの中に居ると睨んだ警察はカリスマレーサー(ヴィン・ディーゼル)が仕切るグループに潜入捜査官を送り込むが、真犯人の確証がないまま、敵対する中国人グループを摘発するが・・・

 「デイライト」「ドラゴン・ハート」などで部分的にいいところを見せながら、なかなか傑作にたどり着かないロブ・コーエンの評判作だが、ここでも傑作になり損ねている。なんだか貧乏性な監督みたいですな。

 多彩な経験のおかげでビジュアルエフェクトの使い方はツボを心得たもので、ニトログリセリンを燃料に噴射して急加速する改造車のスピード感など、もはや自動車というより宇宙船に近いアニメ的な表現が爆笑を誘うもの凄さ。これは映画館で観るべきだったと改めて後悔させるだけの仕上がりにはなっている。

 脚本としては特に褒められたものではなくかなり行き当たりばったりな感触なのだが、特に気に入らないのはラストの主人公とヴィン・ディーゼルの決着の付け方だ。トラック野郎が合法的に運送している荷物を強奪するという観客にとってまったく納得しがたい犯罪を犯しておきながら警官にお目こぼししてもらって、「俺は自由だ」って、それがカリスマストリートレーザーの誇りというものか?

 しかし、クライマックスのCIVIC3台でのトラック襲撃シーンのサスペンスの効いたアクションはなかなかの絶品であり、顔も見せず、台詞も聞かせずに、ただ恐怖心から闇雲にショットガンで反撃してくるトラック運転手の存在の不気味さを掻き立てた演出は非凡なものだ。爆走する巨大トラックに必死でしがみつく強盗団の男の体にストラップが巻きつく場面からも明白なように、白鯨をイメージした演出が試みられており、そうした意味では過去の映画版白鯨よりも成功しているといえるだろう。

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