宇宙の果から飛んできた暴れん坊の双子星が聖書の書き直しを迫る!『地球最後の日』

When Worlds Collide ★★★
1951 スタンダードサイズ 83分 @アマプラ
■昔観ていたはずだが、非常に新鮮な気持ちで見直した。意外に面白い。テクニカラー撮影だが、配信原盤は綺麗なリマスターではないので、色彩も発色が悪く、解像度も劣るが、他の旧作に比べると随分ましなほう。

■驚くのは、意外にも低予算映画で、美術装置も大して大掛かりではないし、特撮の見せ場もさほど多くなく、ミニチュアセットの規模も小さい。総じて後の『妖星ゴラス』の物量に比べると実にこぢんまりしている。主なミニチュアワークの見せ場は地球脱出ロケット基地のあたりだけ。しかも、遊星ザイラの接近による噴火、津波、油田の爆発、洪水等々の天変地異の大特撮もほとんど他の映画からの流用のようだ。NYが水没する有名な合成カットはオリジナルだが、大規模で見栄えのするミニチュアワークはほとんど他の戦争映画や冒険映画の特撮場面の流用に見える。しかし、それぞれかなりできが良いので、非常に見応えがある。

■遊星ザイラとベラスの双子星が地球へ急接近し、遊星ザイラは近傍を通り過ぎるけど、ベラスは地球に衝突することが確認できたので、人類有志はロケットで脱出し、遊星ザイラへ移住する計画を立案するが、国連では科学者の反論があり、政府がロケット建造費用を出さないので、民間に資金を求めるというあたりが、面白いところ。そこで手を上げるのが大富豪のシドニー氏だが、金を出すから口も出す、ロケット搭乗メンバーは俺が決めるといい始めると科学者と対立する。この人物が悪役として後半のお話を牽引する重要な役回り。新世界に対する旧世界の弱肉強食原理、アメリカ的なマチズモの象徴として、いや人類の退廃の象徴として、ラストで完全に否定される。地球に悪が蔓延るから神が人類をリセットするのだといいながら、悪らしい悪は彼しか出ないから、ある意味最重要人物なのだ。

■その前にロケットの搭乗権を巡って、シドニー氏に仕える私設秘書(執事?)が突如彼に反旗を翻す場面が実に痛快で、ずっと前からお前の人間性が大嫌いだったんだ!と虐げられた者の心情を発露する場面が泣かせるクライマックス。

■地球に迫るのが双子星というのがユニークな原作の工夫で、名作『ディープ・インパクト』の同様の工夫に感心したものだが、そのアイディアは本作から援用したものらしい。しかも、この双子星の設定は、主人公たちの三角関係とも相似形をなしており、ヒロインのジョイス(地球?)を巡るデヴィッドとトニーの鞘当と重ね合わされている。トニーがジョイスをデヴィッドに譲るあたりのメロドラマも簡潔で嫌味がない。

■たった83分で地球の滅亡と新世界の獲得を描ききって、聖書に新しいページを付け加えてしまったので、『妖星ゴラス』で東宝もほぼ同じランニングタイムで地球的危機の回避を描いてみせたのだろう。随分高度で洒落た返歌といえる。

参考

▶これもかなりの傑作だと思いますよ。トンデモ映画じゃないよう。
maricozy.hatenablog.jp
▶これも世界が終わる名作。ホントに心に沁みます。素直に良い映画。
maricozy.hatenablog.jp
▶もともと『地球最後の日』のリメイク企画だったらしい。そりゃそうだよねの名作。
maricozy.hatenablog.jp
▶なぜか『地球最後の日』オマージュが炸裂する問題作。必見!
maricozy.hatenablog.jp
▶予算規模的には完全にわが東宝の圧勝です!
maricozy.hatenablog.jp

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