■正直こんな映画が公開されていたことすら知らなかったのだが、ビデオ屋でたまたま目にして借りてきたら、あらびっくり、かなりの傑作だったという顛末。お話はほとんど『ディープ・インパクト』のアナザーストーリーといっても過言でなく、ローリーン・スカファリアという監督、脚本を兼任する女優は絶対あの映画に心酔しているに違いない。そういえばあの映画も女性監督だったな。Seeking a Friend for the End of the World
2012 スコープサイズ 101分
DVD
■小惑星の衝突が回避できないことが確定した世界で、妻に逃げられた中年男はワケアリの隣人女性とともに、高校時代の恋人に一目逢うために出かけるというロードムービーの形式で、余命宣告されたに等しい人間の営みを暖かく観察する。とにかくローリーン・スカファリアという監督の腕前がただ事でなく、監督デビュー作とは信じられない完成度の高さ。スティーブ・カレルの抑制された演技の高度なレベルも演技指導のたまものだろう。相方のキーラ・ナイトレイも奔放でやんちゃな女性を自然に好演していて、新境地。あのいかつい彼女がチャーミングに見えるから、これも監督の采配のたまもの。
■途中から登場して主人公たちに最後まで付き添う犬がとにかくもう愛おしくて、人生の最後に一緒にいてほしいのは人間でもなく、猫でなく(というか、いてくれないだろうけど)、あんな犬ころでいいなあという気がじみじみとしてくる。さらにキーラのレコード偏愛の吐露なども重要なモチーフで、世界の最後はレコードでお気に入りの曲を聴きながら迎えたいと、やっぱり思ってしまうわなあ。
■演出、演技の洗練ぶりとセンスの良さに圧倒される傑作で、もっと話題になってもよさそうなものだが。正直あまりに良い映画なので、びっくりしました。