刀を取るか、包丁を取るか?年下亭主は中二病!?『武士の献立』

基本情報

武士の献立 ★★★
2013 ヴィスタサイズ 121分 @アマプラ
脚本:柏田道夫、山室有紀子、朝原雄三 撮影:沖村志宏 照明:土田正人 美術:原田哲男 音楽:岩代太郎 VFXスーパーバイザー:浅野秀二 監督:朝原雄三

感想

加賀藩江戸屋敷の女中お春は、料理の才能を見込まれて、藩の御料理人である舟木家の次男坊の嫁に所望され、見知らぬ加賀の地に嫁入りするが、年下の夫は藩政の改革に燃える革新派シンパで、包丁より剣に未練があった。。。

■今どき珍しいオリジナル時代劇で、松竹が京都撮影所を使った平成ネオ時代劇シリーズ(?)の一作。監督はなんと「釣りバカ」で有名な朝原雄三で、加賀藩の有名なお家騒動、加賀騒動をベースにしているので興味を持った次第。何しろ橋本忍脚本の映画『加賀騒動』が大のお気に入りなのでね!

■当然ながら大槻伝蔵が登場するが、昔ながらの天下の逆臣ではなく改革派の頭目だし、側室お貞の方(夏川結衣)との密通も描かれるがこれは純愛という設定になっている。当時のこととて、不義密通ですが(今でもそうか!)。大槻伝蔵を演じるのが緒形直人というのも乙なものだが、少ししか登場しないのは味気ない。

上戸彩が出戻りの年上女房というのが、なかなか珍しい設定だけど、ドラマが本格的に動き出す加賀藩の部分は、どうしても夫の高良健吾に感情移入して観てしまう。演技的にはかなり固くて、あまり良い味が出ていないのだが、ドラマの構築がこの若侍を中心としていて、グルメドラマ部分ではない真の狙いは彼の成長のドラマにあるからだ。

■ほのぼのしたグルメドラマを装っているが、高良くんは藩の保守派を暗殺して藩政を糺そうとする革新的過激派・大槻一派の中心メンバーで、その相棒は柄本佑が演じて、彼が高良くんとの運命の対比を形作っている。幼馴染の成海璃子を彼に取られた、あるいは譲ってしまった後悔の念と剣の道への未練、そして何か大きな正しいことを成したいという夢想が、彼を未熟な子供の時代に結びつけている。

■だから本作を高良くん側から見ると実に苦々しい、青春の挽歌が聞こえてくることになる。彼は青年らしい正義感と逸る血気に押されて、加賀藩の旧体制の悪弊を暴力的に刷新すべく旧友たちと計画するが、革新派のリーダーの大槻伝蔵が呆気なく捕縛され、藩内の革新勢力が一掃されると、旧体制の首魁である前田土佐守(鹿賀丈史)を暗殺すべく諮ることになる。だが、彼の夢と理想は年嵩の女達によって呆気なく潰えてしまう。その苦々しさがこの映画の青春映画としての隠し味だ。

■出戻りの古狸女房は料理に天才的な冴えがあるが、政道の理想のことなど分かりはしない。男たちはそう侮っている。だが、彼の理想=行動を遮るのは彼ら女達だ。決起の夜、古狸女房は肝心の刀(彼の少年時代を象徴する、ライナスの安心毛布!)を抱えて雲隠れし、割って入った母には泣き落としにかけられる。そして、日本の若者たちの観念的な夢や理想は、常に女達の現実主義に敗北するのだ。だから、本作は『化石の森』とか『女囚さそり701号恨み節』によく似ているのだ。

■夢に挫折した彼は、それでも古狸によって、現実に寄り添って現実とともに生きる女の強さを教えられ、舐めていた現実の奥深さを識り、少年から大人に成長する。というか、無理やりそうさせられる。そして、次男坊だった彼は夢にも見なかった、舟木家を継いで一族の繁栄をもたらす人生を送ることになる。死すら望んだ我が身が、である。こうして男は、女に産み落とされ、女に生かされるのである。

参考

加賀騒動といえば、実は橋本忍の十八番だった。テレビドラマも書いているらしい。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
男たちの夢見た革命(=夢?理想?)はつねに、母親によって骨抜きにされる運命なのだ。でも、そのおかげでたった一度の命を全うすることができるので、やっぱり感謝だね!?
maricozy.hatenablog.jp
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