基本情報
悪魔の島の赤ちゃん
1982/ST
(2003/2/22 テレビ大阪録画)
原作/松木ひろし 脚本/田村多津夫
撮影/小泉健一郎 照明/大野晨一
美術/斉藤嘉男 音楽/佐藤允彦
監督/山本迪夫
感想(旧HPより転載)
日本テレビの「火曜日の女」シリーズの一編「木の葉の家」(もちろん未見)を火曜サスペンス劇場のために同じ監督でリメイクしたものだが、オリジナルではあの岸田森が演じた粗暴な男の役を石橋蓮司が演じている。
婚約者のカメラマン(岡本富士太)が取材中に死亡したため、孤島に住むその母親(大塚道子)のもとへ身を寄せた身重で口の不自由な主人公(秋吉久美子)は婚約者のいとこで自分の幼い娘も虐待する怪しげな男ケンゾウ(石橋蓮司)の飼い犬に襲われて流産してしまう。(以下は白文字です。反転して読んでね。)母親が弱みを握っている医師(奥村公延)と共謀して赤ん坊を亡き者にしたことを知るが、その矢先にケンゾウの娘が赤ん坊を掘り起こして保護していたことが判明する。実は婚約者の母親の姉が財産を独り占めするため母親を殺してなりすまし、自分の息子を使役して殺人を重ねていたのだった。さらに、死んだはずの婚約者が姿を現すと、常に彼と比較されて劣等感を植え付けられてきた積年の鬱憤を爆発させ母親との離別を宣言するが、逆に母親に刺し殺されてしまうのだった。
オリジナル作品は「血を吸う」シリーズ以前に制作されたものだが、岸田森の登場もあって、既に「血を吸う」シリーズのフォーマットの先駆を成していたらしい。「血を吸う」シリーズで独自の様式を完成させた後のこの作品でも、山本迪夫の怪奇映画ならではの人間設定や画面構成が顕著に表れており、あくまでサスペンス作品ではあるものの、主人公の秋吉久美子を措いて大塚道子と石橋蓮司の歪んだ母子の関係が清算されるところに、ドラマ的なクライマックスを置いており、「血を吸う」シリーズとも多くの部分で通底している。母子の惨劇をただ立ち尽くして傍観するしかない主人公カップルを階段の上から引いた構図で見せるカットなど「血を吸う」シリーズ定番の画面構成で、山本迪夫の怪奇映画に賭ける迷いのない演出姿勢はやはり貴重なものだと思わずにはいられない。
オリジナルの1時間×6本のシリーズを2時間に詰め込んだせいで、やたらとプロットが二転三転することもあり、あまり完成度の高いテレフィーチャーではないが、「血を吸う」シリーズ以降の山本迪夫を概観するうえで、欠かすことのできない作品である。
石橋蓮司の演じた如何にも怪奇映画的なあのマザコン男のキャラクターを絶頂期の岸田森がどう演じていたのか、CS等では放映されたらしい「木の葉の家」は是非とも何とかして観ておきたいものだ。