確かに凄いが、あまりに冗長!『赤い殺意』

基本情報

赤い殺意 ★★★
1964 スコープサイズ(モノクロ) 150分 @アマプラ
企画:高木雅行、友田二郎 原作:藤原審爾 脚本:長谷川慶次、今村昌平 撮影:姫田真佐久 照明:岩木保夫 美術:中村公彦 音楽:黛敏郎 特殊技術:金田啓治 監督:今村昌平

感想

■なんといっても今村昌平の代表作で日本映画の古典ではあるのだが、改めて観てもちょっと過大評価がすぎるのではと感じる。どう考えても150分は長すぎだ。

■この映画じたいが後の日活ロマンポルノの出現を予言しているような内容で、実際、文芸エロ映画として興行的に大成功している。日活がロマンポルノを製作するにあたって、『競輪上人行状記』で今平の脚本を得て弟子的な扱いで監督デビューした西村昭五郎が最初の監督になったのも、そうした系譜を示しているだろう。

■東北の老婆たちの井戸端会議の様子が呪文のように映画の各所に配置され、まだまだ古い家制度が核家族化しつつある現代人を呪縛していた時代を、ある意味マジックリアリズム的に表現するのも、今村昌平の哲学によるものだが、それ自体が今平の妄想、オブセッションに見えて、実際のところ普遍性が感じられない。

■なにしろお話は単純なので犯罪ドラマとはいえサスペンスは手薄だし、ワンシーンが長いから、全体に冗長。春川ますみを襲って、その後も一方的な好意を足がかりに彼女に執着し続ける心臓病みのドラマーの男の方にこそ濃厚なドラマ性があると思うが、監督はそこには共感せずヒロイン側に寄り添う。男の側に寄りそいたいと考えたのは後の石井隆で、傑作『天使のはらわた 赤い陰画』を生み出す。気持ち悪いストーカーの男心が奇跡的に女の心に届くという、男の身勝手な妄想をもじどおりロマンとして描く。

■映像表現としては、民家の中で畳の上で横たわって演じられる場面が多く、キャメラも動くものだから照明が難しく、フィックスの構図のようにかっちりと決め込んだ配光にはならず陰影はかなりラフな表現。このあたりも後のロマンポルノのタッチを彷彿させる。一方で、ロケ撮影は姫田真佐久の本領発揮で物凄くて、東北本線の列車を追った長回しのロケ撮影や、男のもとにUターンしてしまう市電の交差する雪の舞うロケ場面などは映画史に残る名場面で、鳥肌が立つ。
■正直、編集をやり直して2時間程度に圧縮したほうが傑作になると思うがなあ。男を殺そうとする雪中行軍(?)とトンネルの場面も、延々と続いて長い長い。。。
www.nikkatsu.com

参考

昭和40年を目前に、日活映画は文芸エロ映画路線を展開したのだ。
maricozy.hatenablog.jp
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