感想
■両親を亡くした早乙女(そうとめ)家の三姉妹が末の長男の不良化に心を痛める様子を、主に母親代わりの長女の視点から描いた、実におっとりとした文芸映画の良作。昭和37年はこんな映画がさらっと製作されて公開される、まだまだ日本映画にとってはいい時代でした。
■長女は香川京子で、もちろん頼もしいし、次女は白川由美で、都会派のクールなサラリーガールが板についている。佐原健二とカップルというのもファンには嬉しいところ。しかし、この映画でもっとも役得なのは、三女の田村奈巳であることは議論の余地がないであろう。いや、役得というか、地のままアドリブ的に溌溂と演技させた演出のうまさかもしれない。田村奈巳って、非常に綺麗だけど冷たい暗い感じの役柄が多くて、なんだか素材が生かされていない感じがあったのだが、この映画を見ると確かにそうであったと納得した。これだけ明るく溌溂とした勘のいい演技のできる人だったのだ。いや、演技じゃなくて普段のそのままという風に感じさせてしまう演出の妙。
■香川京子と白川由美はきっちりとオーソドックスに演じているのだが、田村奈巳だけはリアクションがほぼアドリブって感じで生々しいし、挙動や台詞のひとつひとつが娘らしい可愛さに溢れていて、なんだろう、そこだけドキュメンタリーな感じなのだ。なんというキュートさ。そしてコメディエンヌとしての素質。後年、『ウルトラQ』とか『ウルトラセブン』とかで、どちらかといえば型にはまった演技をはじめに観ているので、かなり衝撃的だった。よくぞこんな映画、発掘したね。
■お話のほうは姉妹を中心としているので、肝心の長男君の不良化の事情やそこに至る気持ちがあまり描かれず、美人姉妹におもちゃにされている感があって、ドラマとしては煮え切らない。美人三姉妹にスポイルされる男ひとりの悶々たる心情にこそドラマがあるはずだが、原作は壷井栄なので、そこには足を踏み入れない。というか、女から見れば、少年の悶々なんて、取るに足りないというわけさ!
参考
田村奈巳、出てます、出てます。ザ・ガードマンの怪談物にもちゃんと出てますよ。ホント、こういうのを役不足というのですね。
maricozy.hatenablog.jp
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『悪魔が呼んでいる』の田村奈巳はとっても綺麗でファッショナブルなので、ステロタイプな役柄だけど忘れがたい。
maricozy.hatenablog.jp
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