白と黒 ★★★☆

基本情報

白と黒
1963/CS
(2002/6/28 BS2録画)
脚本/橋本 忍
撮影/村井 博 照明/比留川大助
美術/水谷 浩 音楽/武満 徹
監督/堀川弘通

感想

 長年不倫関係にあった恩人の妻(淡島千景)を殺してしまった弁護士(仲代達矢)だが、窃盗の常習犯(井川比佐志)が逮捕されて捜査検事(小林桂樹)の尋問で殺しを自白してしまうと、彼の弁護に立つことに。ところが、物証が無いことを不審に思った捜査検事が裏付け捜査を続けるうち、弁護士にこそ動機が存在することに気づき、弁護士を問いつめるのだが・・・

 何故か完全に忘れ去られているが、全盛期の橋本忍のオリジナル脚本の威力が良く示されたサスペンス映画の佳作。最後にはお約束通りどんでん返しも用意され、かなり完成度の高い脚本である。しかし、おそらくビデオ化もされていないのではないだろうか。

 東京映画の技術レベルの高さを示す村井博の影の多い画調も手堅く、東宝映画製作ではこうした照明効果は得られにくいだろう。

 出番の少ない淡島千景が存在感だけで若い弁護士に絡みつく年増女を語り尽くし、検察のメンツを体現する、捜査検事の上司を演じる小沢栄太郎はいつもながらの完璧な演技で隙がないし、初動捜査に当たるベテラン刑事は西村晃で、今回は悪徳刑事ではないのが、ちょっと物足りないのだが、ほぼ完璧な配役による演技合戦が贅沢の極みで、唯一弁護士の婚約者を演じる大空真弓に無理があるのが難点といったところ。

 安宿で検事が弁護士の疑惑を問いつめるクライマックスが演技合戦の白眉であり、橋本忍の腕の見せ所でもあるのだが、常に黒澤明の愛弟子という位置づけしか語られない堀川弘通という監督の演技指導者としての腕前が確かなものであったことをよく示しているだろう。

 東宝映画の傍系として地味ながら演出家の持ち味を生かした良質な映画を産み出した東京映画の持ち味の一面を垣間見るには好適な作品といえるし、橋本忍の話術を愛する者なら必見といえるだろう。堪能しました。


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