続・人間革命
1976 スコープサイズ 157分
原作■池田大作 脚本■橋本忍
撮影■西垣六郎 美術■村木与四郎
照明■石井長四郎 音楽■伊部晴美
特技監督■中野昭慶 動画■月岡貞夫
監督■舛田利雄
■戸田城聖と山本伸一(池田大作)が出会い、師弟の関係を築いてゆくが、事業は遂に破綻して、実業と信心の二足の草鞋に破綻が生じ、学会に専念することを誓うまでを描く。日蓮大聖人が遂に口を開き、戸田城聖を一喝するのが大きな見せ場。
■立正安国論の読み聞かせの場面で東宝特撮らしい天変地異のスペクタクルが描かれ、1/10スケールのミニチュアが威力を発揮する。短いシーンだが、中野特撮の最高傑作のひとつだろう。山寺の崩壊も非常にリアルな質感だし、山門の大階段にはちゃんと民衆が合成されているし、地割れに飲み込まれる民衆も移動マスク合成で、非常に贅沢な仕事。井上泰幸が呼ばれたのも頷けるクオリティ。一方、地球と生命の進化の過程を描くのに、さすがに特撮では予算的にも技術的にも困難だったため、動画による絵解きが採用された。天才アニメーターと言われる月岡貞夫が制作にあたったが、決してリアルな作風ではなく、ファンタジーに見えてしまう。丹波哲郎の大演説が被さると異様な違和感が残るのは残念。しかし、セルアニメ以外の技法も用いられている。
■前作よりも内容が盛りだくさんなため編集のリズムが尋常でない。岡本喜八の映画並みの速足。キャストは無駄に豪華で、尾藤イサオと岸田森のヤクザコンビとか、謎でしかない。渡哲也が完全に日活映画そのままで、派手な殴り込みの見せ場まで盛り込んで、単純に楽しい。
■丹波哲郎の演技は、もうなんとも言いようのないレベルで完成され、本作は演説映画の金字塔と言えるだろう。特高の取調官から教義の不在を鋭く突かれた戸田城聖が呻吟しながら掴んだ法華経の真髄を十界論をベースとしながら宇宙進化の理まで敷衍して語りに語る大風呂敷の面白さ、その理論武装の進展ぶりには大いに感心した。ハリウッドにも宗教映画は多々あるが、教義そのものを具体的に突き詰めて表現したものは皆無で、それはもちろんそんなことをしてたのではドラマにならないからだが、このシリーズは創価学会の弱点である教義の不在を中心テーマとして、いやいやそうじゃなくて、これだけの哲学と理論武装が用意されているのだと訴える戦略を映画の中心に据えたのは圧巻といえるだろう。丹波哲郎の講話がそのまま映画の見せ場になるという確信が橋本忍の戦略を支えたのだろう。正直、全盛期の橋本忍の先鋭的な通俗性に比べるとその矛先は鈍いが、それでもやっぱり映画として面白いから文句は言えない。
■前作で十界論の基礎は確認されているから、本作は冒頭から丹波節もボルテージが最高潮で、クライマックスの講話は完全に『ノストラダムスの大予言』そのもの。昭和25年くらいの設定なのに、原爆や水爆の危機を語り、映画の作り方が完全に同じところを目指している。八住利雄も橋本忍も同じように大演説を書いたところをみると、これは田中友幸の強い志向なのかもしれない。『人間革命』『日本沈没』『ノストラダムスの大予言』『続・人間革命』は東宝特撮というフレームだけでなく、演説は娯楽であるとする演説映画というジャンルの確立という視点から評価すべきだろう。そして、その遥か後方には『愛・旅立ち』が幽かに見えてくる気がする。